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40話 魔王再びお目見え

 地では炎が燃え盛る一方で、冷え冷えとした空では月と星が煌々と光輝いていた。

 ひどく対照的な光景の中を私たちは進む。

 ハーデスの周りでは奴の身体から放たれる魔力で炎が解け、武神の周りではなぜか炎で燃える地面がまるで鋭利なもので切断されたようにはがれていく。


 当初、私が来たときとは二人とも何かがちがうということハッキリと分かった。

 討伐と防衛では大きく意味が異なるということだろう。


 そんな二人の様子に対して細々したことを考えていると向こうに見える赤い塊――魔王が翼を広げる様が見えた。


『戦うか、死ぬか選べ!』


 前と同じく魔王は『禁術』を発動させるとこちらに向けて飛翔してきた。


 すると私の身体が紫色の燐光を帯び始め、アーツ『図が高い!』を発動した。

 魔王の機敏だった動きがアーツによって生じた上からの重力によって少しだけ緩慢になっている様に見える。


 魔王がもっとこちらに対して距離を縮めていくとハーデスが五節棍を魔王に向けて構え、振りかぶったと思うと魔王の身体から鮮血が迸る。

 この世界に来て初めて魔王が血を流す様を見た。


 アーツを遣わずにそんな所業をしたハーデスに対して私は驚きを隠せない。


 こちらが驚いていると武神はそれが来るのを待っていたように二本の剣を取り出すと魔王と肉薄する。


『隕鉄破り』


 アーツを発動させると鮮血が流れていた場所がより深くえぐれ、血が並々と地面に流れる。

 踏み込んで追撃をかけるかと思うと、冷気が魔王の身体から生じ始め、思わず踏み出した足が止まる。


「魔王が拘束を一段階解除した。氷も追加で操るようになるが気にせずに突っ込んでいけ。留まる方が危険だ」


 武神が下がると同時にこちらに向けて的確な助言を寄こしてきた。

 止まった足を動かして、魔王に向けて切り込む。

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