2話 『自由の利かない公爵に襲い掛かるなんて……!!』
俺はガチムチたちによって、ボコボコにされ、盾に魔改造された。
どうやら彼らはゴブリンか、なにかだったようだ。
目と目があったら好きだと気づくみたいなこと言う奴がいるけど、ウソだわ、あれ。
信頼もっさりゲットしたと思ったら、まさかの折檻タイムだよ。
「クリムゾン、助けてくれ。このままじゃ、ホモにレ〇プされて、四性武器『ゲイバインダーシールド』になっちまう」
「自分のしたことの責任は自分で取るべきよ。あんたが四性武器になって、あたしがタチの勇者と呼ばれることになってもね」
ダメだ、このタチの悪魔。俺をガチムチたちの贄にしようとしてる……。
俺は何とかしてこの状況から抜け出すために、周りにいる奴らにちらちら視線を投げかける。
アダルマンティーは血走った眼でこちらを見返し、イケメンはキョどり、メイドは真顔。
若干、目がありそうなイケメンをガン見する。
「すいません、僕たちは夕飯の用意しなければならないので、ここで失礼しますね」
イケメンは気まずそうな顔をすると、そう言ってメイドともに踵を返した。
くそ、真面目系クズか。
残ったのは、血走った目のアダルマンティーだけ。
目と目が合う。
「どうやら分かり合えたようだね。ここじゃなんだから、あっちの茂みに行こうか」
奴はわけのわからないことをつぶやいて、俺を茂みに向かって引きずり始める。
自由の利かない人間に襲いかかるなんて……!と思っていると、ブッシュの向こう側にもう到着だ。
「じゃあ、始めようか」
アダルマンティーはそう言うと、ハートの燐光をこぼす目をこちらに近づけてくる。
やばい、マジで死ぬ五秒前だ。
何かないか、何か……。
おれは視覚野をフル活動させて、何かを探すと、空間が揺れるのが見えた。
手足は言わずもがな動かないので、ヤケクソで『ラブサンシャイン』放出。
「っ!」
空間の揺らぎから呻きが聞こえると思うと、黒装束の女が姿を現した。
僥倖のような気もするが、どう見ても、こちらの味方してくれそうな見た目をしてない。
ザ・アサシンて感じで、お命頂戴されそうだ。
てか絶対ノースクラメルの回し者だろ。
こちらの異変に気付いたのか、アダルマンティーも黒装束の女の方を振り向く。
「何だい、あんた?」
「チっ!」
黒装束はアダルマンティーの問いかけに舌打ちすると、迷わずにクナイを投擲し、距離を詰めてくる。
『天空衝!』
だが、アダルマンティーはそれらの対処を拳一つで終わらせる。
拳から生じた衝撃波はクナイを弾き、黒装束に肉薄する。
目の前の人間が飛び道具を使ってくるとは思わなかったのか、黒装束は目を見開く。
衝撃波が黒装束にあたると、ひらひらと質量を感じさせない感じで飛んでいた。
身代わりだ。そう気づくと、俺の頭上で鋭い光が跳ねる。
何が起こているか理解した時にはもう遅い。
「覚悟!」
俺に向けて、鋭く研がれた暗器が振り下ろされる。
心臓ぶすりで即死はまずいので、盾を無理やりひっくり返して狙いをそらす。
一拍も置かずにバゴンと固いものが割れる音ともに、わき腹に鈍い痛みが生じた。
少し体内で響いたが、行動に支障はないので追撃を避けるために立ちあがる。
先ほど暗器が飛んできた方を見ると、アダルマンティーがアサシンを組み臥していた。
決着はついたらしい。
「なんで、全力でやったのに無傷なの……」
こちらに向けて何やら呟く暗殺者の顔を見ると、見覚えのある顔だった。
クロノスちゃんだ。
おおよそ国王に俺の暗殺でも依頼されて、ここまで来たのだろう。
敵国でも見境なしか、ウラノス王。
めちゃくちゃだな。しかも国で一番のアサシン早速差し向けてくるとは。
「あんた、これを分かってて、無防備な姿をさらしてたのかい?」
アダルマンティーが神妙そうな顔でこちらに尋ねてくる。
分かるわけがないだろう、何言ってんだ。
「それよりも、早くアサシンを独房に閉じ込めましょう。また暴れられても厄介だ」
「そ、それもそうだね」
アダルマンティーは若干気恥ずかしいそうにすると、壊れた盾の近くにあった荒縄でクロノスちゃんを縛りあげると担いだ。
「一度、ここの最高責任者に意見を聞きに行きますか」
―|―|―
クロノスちゃんを捕まえったことをヘルメスに報告すると、奴は早速尋問タイムに入りたいと言い始めた。
若干エロいことも起こるんじゃないかと期待しつつ、俺は机を隔てて見つめ合う、ヘルメスと拘束状態のクロノスちゃんを見つめる。
「君はなにをしにここまで来たんだ?」
ヘルメスがそう問いかけると、クロノスちゃんは意地の悪そうな笑みを口に浮かべた。
「いえ、そこにおられるノースクラメルの次期公爵で在られるガイア・フォース様にお呼ばれして、会いに来ただけです」
クロノスちゃんが俺の方を向いてそう言い終えると、ヘルメスが「なん……だ……と!?」みたいな顔をした。
俺がその顔したいよ。