17話 指定暴力団神々
「そういうことじゃないでしょ。もっかい占いなさいよ」
「妾は賢きもの。無駄と分かったことは二度はせぬ。それにハーデスとかいう小僧のことよりもこの娘が聞きたいのは善神と邪神のことじゃ」
「逃げたわね」
「なんとでもいうが言い」
沌神の追求から貴神は逃れると私の方に向き直り、値踏みするような目をこちらにむけた。
「まず二神のことを質問する前にそちはどれだけ神のことについて知っておるか尋ねたい。
そちが知っている神のことについて話してみよ」
「私の知っている神についての事がらですか。私が知っているのは神が六つの国にそれぞれ存在し、王族にのみ加護をあたえること。善神と邪神とが争いあっているということです」
「そちが知っているのは民草の常識に毛が生えた程度といったところか」
こちらが知っていることをすべて話すと貴神は事実を確認するような口調でそう呟く。
どこから言おうか考えるように少しの間、目を伏せると形のいい唇を動かす。
「では神がどういったものから話すか。まず神は精霊から選出されるものじゃ。そちらは神と精霊をまったく別のものと考えておるかもしれんが基本は同じ、人々に加護を与えるのを生業としておる」
「基本ということは違う点もあるということですか?」
「その通りじゃ。違う点はある。他の精霊とは異なり、神に選ばれた精霊はその任期の間、神々の争いに参加し、勝利すれば王神になる権利が与えられる。まあ、この争いに参加するメリットなどないので、ほとんどの神は参加せぬが」
「王神になると何かあるのではないのですか? 本当にないというのならなぜ善神は王神になどなったというのです?」
貴神の説明を途中まで聞き王神になるため、なったために争いを行っているのかと予想を立てていたが、争いに参加するメリットがないという言葉でそれは打ち砕かれた。
ニ神が争う理由や互いに嫌悪する理由が分からなくなる。
それに確かに武神からは善神が王神になって喜んでいたと聞いている。
「他の神がどうかは知らないけど。あたしらは少なくとも知らないわね。知ってたらあたしらも争いに参加してるし。別段ジキルも王神になろうしてなったわけじゃないと思うし。ジキルが王神になったときは、ハイドがジキルにケンカを吹かけて、たまたまそれにジキルが勝って勝手になってたみたいな感じだったからね」
「ですが、武神から善神があの人に会えると喜んでいたと聞いています」
「それ本当? じゃあ、王神になるとメリットて王神になってから分かるってことじゃない。なによ、あたしも参加しとけばよかった……。というよりもあのおっさん肝心なことなんだからあたしに教えなさいよ」




