16話 当たる当たる詐欺
ハーデスも他の世界から飛ばされてきたということか?
思いがけず問いかけるように沌神をじっと見つめてしまうと、察したように沌神は口を開いた。
「まああたしが推測でよその世界から来たんじゃないかと思ってるだけだから。ハーデスに聞いて100%そのことについて何かわかるかは保証できないけどね」
「なぜそんな推測を立てたのです?」
ハーデスに対してなぜそんな推測を立てたのか気になりオウム返しすると、沌神は寝ぼけた体を起こすように伸びをしながら答える。
「ここの人間は誕生すれば、精霊やら神やらから加護を受けるのにあいつは誰からも加護を受けていないから。そんな人間、よその世界の人間だとしか思えないでしょ。神様も精霊もいない世界から来たてところが妥当な線じゃないかしら」
「神様も精霊もいない世界からですか……」
だがそうなると、まったく持って神のことをハーデスは知らないということになり、再三こちらに向けて注意を飛ばしたことと矛盾する。
あの有無を言わせないような態度がすべて嘘だというのはさすがにないだろう。
「そんなに気になるならハーデスの運命を見てやろうか?」
「貴神は人の運命を見れるというのですか?」
「王と占い、星見は切っても離せん関係にあるからな。妾は多少抽象的ではあるが、正確な運命を占うことが出来る」
そういうといきなり貴神の目の前で火が上がり、煤けた骨のようなものが生じた。
宙に浮かんだそれを見て、退屈そうな顔するとこちらから貴神は目をそらした。
「やっぱやめじゃ。どこぞの馬の骨の運命なぞ見たところで面白くもない」
「失敗したのね……」
明らかに占いのアーツを発動させた後に、やる気がないからやっぱやらないという支離滅裂なことを言う貴神に、沌神が容赦なく現実を突きつける。
貴神は沌神を睨みつけて、口の端を震わせた。
「失敗してなどおらん! 運命が見えんかっただけのこと。おおよそハーデスに刻まれた運命が存在しないのじゃ」
「運命て普通刻まれてるものなんじゃないの」
「確かにその通りだが。占いの結果ではなにも示されんかった。つまりそういうことじゃ」
沌神が貴神を胡散臭そうなものを見る目で見ると、貴神はそっぽを向いた。
アーツで成された占いならば、何かしらの妨害が無ければ成功するはずだ。
ならば本当にハーデスの運命が存在しないということが正しい結果という事になるが……。
そうだとするとますますハーデスが謎が深まることになる。




