15話 辣腕神による事情聴取
いきなり敬意を示せと言われても釈然とせず、なぜ見ず知らずのものに敬意を示さなければいけないのかと反感を覚える。
「敬意を示せと言われても、私はノースクラメルのもの。他国の神に膝を折る道理はありません」
「フン、言うではないか。その不遜な態度、普通の皇帝であれば凌遅にかけるところだが、妾は他の雑魚共とは違い寛大だ。許してやろう」
こちらが断ると貴神は扇子を広げて口元を隠してそう宣う。
そのさまはどこまでも高慢で、謙遜が生じるだろう隙さえない。
「よかったわね。気に入られたわよ」
「これ、帰蝶! 余計なことを言うでない!」
だが沌神の言葉で高慢さが大きく揺らいだ。
その張本人の沌神を見ると、眠そうな顔して、身体を起こすと小さく欠伸をした。
朝方まで魔王と戦っていたので眠いのかもしれない。
「そち、早く要件を申せ」
沌神がからかったせいで、貴神は気色ばみながらこちらに尋ねてくる。
とばっちりを受けているようだが、話が早く進みそうなので何とも言えない気持ちだ。
「では僭越ながら話させていただきます。私の要件としてはあなたたちに世界を飛ぶ術と神々について教えていただきたいということです」
「なぜ世界を飛び、神々のことについて尋ねる?」
「前者については邪神に連れて来られたこの世界から元の世界に戻るため。後者については善神と邪神の争いに巻き込まれ、見て見ぬふりを出来ぬと思ったからです」
貴神は薄い紫色の光を湛える青い瞳でこちらを見定めるように見つめると口を開いた。
「確かに『慧眼』で見たところ、そちはこの世界の者ではないな。善神の加護を得たものはこの世界にはおらんはずだからのう」
『慧眼』。一部の王であるものが使えるすべてを見通す目。
そんなものでわざわざ見るとは尊大態度を取っているが、わりに用心深い神のようだ。
「妾は世界を飛ぶ術を持っておらんが、二神については教えてやろう。あ奴らには辟易しておるから愚痴でも貴様に聞かせてやるわ」
「あいつらの愚痴聞かせるていうんなら、あたしも参加させてもらおうかしら。あ、ちなみにあたしも世界を飛ぶ術は知らない。それについてはハーデスに聞いた方がいいじゃない?」




