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12話 黒い三人衆



「本当にそれでいいのか?」


 自分の心の声が聞こえた。

 だがそれは常のように心の中で響く形ではなく、鼓膜の中に響く形で聞こえた。

 誰かが自分の心を代弁したのだ。


 声のした方を振り向くと、こちらに嫌いだといったペルセポネがティーセットを持って立っていた。

 言葉を発したハーデスではなく、こちらを見つめてむっつりした顔をしている。


「私ならばその問題を有耶無耶になどしない」


 執務机まで行って、ティーセットを用意し始めるとそう言った。

 その言葉には言外に「自分はするというのに、お前はしないのか」というようなこちらを詰るような意味合いが含まれていた。


 ペルセポネの言葉にハーデスは諦めたように目を伏せ、武神は口に咥えた葉巻を指でつまみ、その言葉に対して私がどういった返答をするのか期待するような視線を投げかけてくる。


「ペルセポネに同調するわけではないが、何かが起こって誰かが巻き込まれているというのに、それを放っておくのは間違ってると思う」


 その返事を聞くと武神は葉巻の火を消して、ニヤリと笑う。

 まるで待っていたというばかりの反応だった。

 こちらに関わるなと言っていたというのに矛盾している。

 よくわからない人だ。


「残念だったな。ハーデス」


「薄情者ですね、師匠は」


 武神の言葉にハーデスは詰るように返事をすると、私にも朧げではあるがどういうものだったのか分かった。

 どうやらハーデスが裏で、私が二神と関わらないように手をまわしていたようだ。

 いつ彼らはそんなやり取りをしたのだろうか?


「紅茶は大好物だろう?」


 私が疑問に思っているとペルセポネは、そう言って紅茶を渡してきた。

 その言葉に驚かされる。

 なぜ言ってもないのに好物だと分かったのか。


 ペルセポネを思わず凝視するが素知らぬふりをして、踵を返してティーセットの元に歩いていく。


 何かを企んでいるハーデス、どことなく何かを楽しんでいるような武神、自分のことを知りすぎているペルセポネ。

 そこまで行くと少し目の前にいる三人組が怪しげに見えてきた。





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