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11話 喧嘩は紳士的に傍観

 善神と邪神との間の具体的な確執の内容はわからないが、武神の言葉でそれによってできた亀裂の大きさは理解できた。


「互いにかなり嫌いあっているんですね」


「周りを巻き込んでも気にならんくらいだからな。相当なもんだ。善神が王神から落ちるまでは絶対にやめんだろうな」


 王神。

 神々の長ということだろうか。

 神々に対して、そんな役職があるとは初めて聞いた。


「邪神は善神を王神からなぜ落とそうとしてるんですか?」


「分からんな。だが善神が王神になってから、あの人を呼べるとか嘯いているのは時たま聞いたことがあるな。……確か邪神が善神落としに躍起になったのはそのころだったか」


 武神は記憶を掘り出すように顎を撫ぜると、曖昧な口調でそう答える。

 あの人。 王神になった途端の対立激化。

 二神の間に何かがあるのは確かだろう。

 だが、それで魔王を狙っていた自分がなぜここに送られるのだろうか?


「難しい顔をしているな。神の思惑なんていう大きくて、煩雑そうなものよりもお前は目の前にある問題を解決したらどうだ」


「自分が帰る元の世界に帰る方法を探した方がいいということですか?」


「そうだ。わざわざ二神の対立の渦中に飛び込んでいく必要はないからな。お前は善神にその片棒を担がされただけだろ? ならけったいなものに関わらず、自分のやることだけやってとんずらした方がいい」


 気だるげに口に葉巻を咥えると、何かを思い出すように遠い目をして武神はこちらに助言する。

 その様子を見たハーデスは意味ありげにこちらの瞳を覗きこむと口を開いた。


「師匠の言う通りでしょう。ゼウスさんはまず戻る方法について最優先に考えるべきです。神々のことなど本来人には関係のないことなのですから」


 魔王にも矛を交える勇士である二人が神々の争いに首を突っ込むなと言う。

 ということはそれそうおうの何かがあるということだろう。

 ものごとを有耶無耶にするその態度には少し苛立つところがあるが、二人の言っていることは理にかなっている。


 今この問題を解決すれば、確かに私には二神に関わる必要などないのだから。





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