9話 魔王を襲う理不尽なプライバシー侵害
魔王についてどれだけ知っているんだ?」
武神は小さくなった葉巻を皿の上で潰すと、新しいものを取り出して、口にくわえる。
「ガイアが魔王であることと、大陸すべての国を滅ぼすということです」
「奴の名前と奴がここで成したことだけか……。善神の出し惜しみも甚だしいな」
武神は紫煙を吐きながら、眉間をしかめた。
葉巻の味でも誤魔化せないほど、憂鬱な事柄だとその姿が如実に語っている。
「説明することがらが当初よりも増えたが、説明する心づもりだったから大して変わらんと思っておこう」
武神はそう言ってまだ半分ほど、残っている葉巻を潰すと、また新しいものに手を伸ばす。
「早速だが、お前は魔王をガイアだとみているようだが、魔王はガイアだけじゃない」
「複数人いると?」
「ああ、その通りだ」
私がそう尋ねると武神は鷹揚に頷いた。
「まあ、いくつもいるっていても魔王の亡骸みたいなものだがな。本来の意識も無ければ、力も全盛期よりも大幅に落ち、名前も変わって、今じゃ『帝龍』何て呼ばれてる」
帝龍が魔王。
突飛な話だったが、ガイアの龍化した姿を思い出すとあり得ない話しではないような気がした。




