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8話 許してください、なんでもしますから!




 初対面の少女はそれだけ告げるとそそくさと、詰所の奥に戻っていた。

 ひどく第一印象が悪い。

 どれだけの業を背負えば、初対面の相手に、嫌いだと言えるのだろうか?

 私がそんなとりとめのないことを考えていると、


「すいません。ペルセポネがいきなり失礼なことを言ってしまって」


 ハーデスが深々と腰を折って謝ってきた。

 彼の誠意に満ち満ちた態度に、少しの苛立ちは霧散して、思わずこちらの方が申し訳のないことをしたような気持ちになって来る。


「いや、別段気にしているわけじゃないし、貴公がした訳でもないのにが謝るられても困る。顔を上げてくれ」


 宥めるとハーデスはしぶしぶと言った感じではあったが、顔を上げた。


「僕の妻のやったことなので、僕がやったことも同じようなものです。その変わりと言っては何ですが、僕にできることならばなんでもしましょう」


 ハーデスはこちらに破格の条件を提示してくる。

 たかだか心象を損ねた程度で大げさだ。おかげでこちらが何か言わなければならない状況が出来てしまった。


 ハーデスに無茶ぶりをしてもしょうがないので、彼が答えを知っていそうな事について尋ねることにする。


「じゃあ、魔王の禁術について聞かせてもらえるか?」


「魔王の禁術ですか」


 私がそう尋ねるとハーデスは少し考えを整理すうように瞳を天井に向けた。


「あれはあの場で見た通り、相手の行動に禁止をかける術です。魔王はアレを時間制限付きではありますが、簡単に発動させることが出来るので気を付けた方がいいでしょう」


「時間制限まで待つのが唯一の解法ということか」


 魔王の能力について尋ねるのはやはり良かったようだ。ハーデスも窮することなく答えられ、私も有益な情報を得られ、いい塩梅でことの収集が付いた。


「そういえばお前には魔王について教えてなかったな……」


 安堵していると武神がそう口ずさむのが聞こえた。





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