12話 聖女のパンツを持つ真の聖女であるこの僕に歯向かうというのか!
近所迷惑だよ、コノヤロー!
俺はいきなり叫び始めた変質者を止めるために窓に向かう。
「まさか聖女である証明の聖骸布を今ここで使うというのですか」
「聖骸布!? 初代聖女が身に着けていた襦袢をここで! 正気か!」
「魔王は何を考えているていうんだ」
バッグでマザーと聖職者たちが騒ぎ始める。
ロケットペンダントの中身はよくわからんが曰くつきで聖女である証明らしい。
聖女である証明というところに少し興味が湧いたので、窓に行く前の道中、ペンダントを開く。
中から嫌に白いテカテカパンツが出てきた。新品そうに見えるのに、すこしよれている。
未使用に見えるのに使用済み、ひどく不気味だ。
俺の中でそいつの呪物認定が確定した。
見た目はバチくないけど、なんかバチいそいつをおくところもないので、仕方なく窓まで同行させる。
すると無駄に豪華そうな甲冑を来たおっさんが驚いた顔をして、叫んだ。
「そ、それは聖骸布。ま、まさか貴様!」
どうやら聖女と聖骸布――パンツはこの迷惑を体現しような連中にかなりの有効打になるようだ。
とりあえず、俺が、俺たちが聖女!とか適当なことを言っとけば散ってくれそうな雰囲気だ。
「ふん! 聖女のパンツを持つ真の聖女であるこの僕に歯向かうというのか……!」
ちょっと威圧高めにそうお帰りなさいませコールをすると奴らは深刻そうな顔をし始めた。
「なんたる皮肉か! 教会の聖女認定の制度に異論を唱えるとは! この国の教義自体が陳腐だとでもいうのか?」
いけるかと思ったが逆効果だ。さっきよりも騒ぎ始めた。
近所迷惑ここに極まれりだ。
「おい、おい、お前らいつまで堅物やってんだよ。こっち側に来た方がいいぜ。安価で飲み放題食い放題。お上のじいさんどもの顔を肴にして飲むよりよっぽどいいぞ」
「ヘイリック、貴様、死んだはずじゃ!?」
「ボコボコにされたけどしんじゃいねえよ。魔王の配下になったら傷はすぐ癒えたし、安い金払えば接待も受けられたからな」
「き、貴様……。聖職者としての誇りが……! ツッ!」
ド派手甲冑の男が文句を言おうとすると、男の取り巻きどもが武装解除し始めた。
「わざわざ戦う必要もないし、魔王の方についた方が待遇がいいじゃねえか。俺はあっちにつく」
「たまに市民に威張れるだけでこき使わされる教会よりも、あっちの方がましだ」
「別に教義とか教えとかどうでもいいからな。楽しいのが一番大事だわ」
近所迷惑軍の若者たちは、反社会精神があまりなかったらしい。
お酒おいしい。それを聞いただけでマジダリいみたいな感じになっている。
奴らはきっとゆとり世代かなんかだろう。
「……」
リーダーのおっさんがかなり苦しそうなような、安堵したよな不思議な顔をして黙り始めた。
すると武器を地面に落として、手を万歳のかたちで上げた。
「降伏する。俺らをあんたの下につかせてくれ」
一番硬派そうなおっさんだったのに、こいつもゆとりだったらしい。
まあいいか。とりあえずやめたし、どうせ塔はおっさんだらけだし、今更おっさんがいくら増えても変わらんだろう。
きっと彼らはこの塔の中で社会に準じることを知り、真人間に戻るのだろう。
「いいで――」
「ウォルヌス、その前にアンタはすることがあるんじゃないのか?」
俺が了承の返事をしようとするとファーザーがおっさんに厳しい目つきで見下ろす。
「ぐうう、非礼を詫びる」
言われたおっさんは不詳不詳と言った感じだったが、土下座した。
ファーザーは満足そうな顔をするとバッグに戻っていく。
俺が再度了承の言葉をつげるとすると塔の門が開錠され、おっさんたちが勝手に塔の中に上がり込んでいた。
結果、幼女の親は見つからないのに、おっさんが大量に増員された。




