8話 ほう、昼間からの援助交際は大変効率が良く……
カキン、カキン!
ツルハシを振りまわし、俺は土壁を削りまくる。
だが、勢いに反して出てくるのは石ころと謎鉱石ばかり。
ファーザーによるとブクマ鉱石はびっくりするほど固いらしく一度小突けば弾く音でわかるらしいが、そんな音聞こえたためしがない。
ほんとに埋まっているのかコレ。
若干苛立ちを覚えつつ、ストレスを発散するようにツルハシスイングを俺はエンドレスで行う。
「聖女様、ご覧下さい。異教徒の勤勉なる働きぶりを。我が監獄の素晴らさがお分かりになりましょう」
「これは強制労働と何が違うというのですか……」
「聖女様……。おわかりになってください。異教に染まった彼らには無心になり、忘れる時間が必要なのです。これもそのために必要なものです」
バックがうるさいな。
振り返るとカス神父が俺と同い年くらいの女の子とこちら見て何やら言葉を交わしている。
女の子は白い髪と青い瞳という如何にも清楚といった感じの子だ。
ハゲの小太りのおっさんと一見清楚な女の子。
間違いなく援助交際ですね……。
見なかったことにしとこう。
最近幼女の闇に触れて、精神的ダメージを食らったばかりなのだ。
それに加えて同年代の闇まで垣間見てしまったら、精神崩壊待ったなしだ。
俺は二人に背を向けて再び心頭滅却して、ツルハシスイングを行う。
しばらくすると
ガキン!
と音がした。
なんだ?と思うと俺のツルハシが中ほどから折れていた。
「ぎゃああああ! 私の毛根があああ!」
背後からカス神父の悲鳴が聞こえ、振り返るとカス神父の頭に折れたツルハシがめり込んでいた。
「おのれ! 異教徒の分際で私の毛根を死滅させるとは許せん!」
どさくさに紛れて、自分のハゲを俺のせいにしようとするカス神父。
とんでもねえヤローだ。
俺が全国のスキンヘッドに謝れと目で訴えると、カス神父が手に光を集め始めた。
「異教徒に神罰を!」
集められた光が収束して、俺に向けて射出される。
眼が眩しい。
「な、なぜ神罰が効かぬ、貴様一体何者だ!?」
眼がちかちかする感覚から回復すると、驚愕した顔でこちらを見つめる援助交際二人組の姿が目に映った。
昼間から援助交際決め込むテメエらが何者だよ、コノヤロー!と思わず絶叫しそうになるが何か怒っているぽいので素直に答える事にする。
「僕は――」
バゴン!
俺が名乗ろうとするとなぜか背後が爆発した。
カス神父の隣にいる女の子に向かって、そのまま吹っ飛んでいく。
「ちょ……! ま、おう……!」
腹に何かが当たり変な悲鳴が口からでた。
なにか訳が分からないが、俺は膝をついて女の子をお姫様抱っこしていた。
ヤバいな……。
「ち、超魔王だと!? き、貴様、聖女様をどうするつもりだ!!」
案の定女の子を取られたと思ったカス神父が激おこプンプン丸だ。
仕方ないので女の子を下ろそうとすると、
「ガイアさん! 救出に来ました!」
爆発した壁の向こうからドロネコが現れた。
鬼気迫った表情でこちらに近づいて来る。
「聖女を人質に脱獄を図ろうと……。ガイアさんやってしまったものはしょうがありません。聖女はそのまま人質にしてここから脱出しましょう!」
どうやらドロネコは女の子を気に入ってしまったらしい。
お持ち帰りをご所望だ。
奴の機嫌を損ねて、馭者ストライキを起こされても嫌なので、神父には悪いが言うことを聞く。
「すいません。神父、彼女は献上したいと思います」
「なに、献上!? 聖女を攫い、邪神の贄とする気か、魔王!! 貴様最初からこれを狙って!」
神父に一言謝りを入れるが、もうブちぎれすぎて、精神状態がおかしくなっているため会話が成立していない。
俺はとばっちりを受けるのもごめんなので、神父を無視してそそくさとそこから退場を始める。
すると背後から
「俺は腐りきった神父どもより、魔王を選ぶぜ!」
粗野な男たちがなぜか勝鬨を上げた。
「何をする気なのですか!?」
懐のビッチが俺に対してドロネコとのプレイ内容を聞いて来る。
奴の性癖など俺は知らない。
「直にわかります」
俺は至極真っ当な答えを彼女に返すと、監獄から脱出した。




