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国で暗殺されそうなので、公爵やめて辺境で美少女専門テイマーになります  作者: スイセイムシ
テイマー条約第4条 リリースする場合は生息地に戻さなければならない
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3話 ママを求めて3万里②

 


 俺は道中の護衛をピンクに頼もうと、前回奴が消息を絶った森の中に行くと世にもおぞましい光景を見た。


「儂は誰? お前は何奴?」


「フフフ、あなたはメリットビリーブ様。それから私はあなたがこの世で一番愛している妻のクリムゾン。隣にいるのは犬のカエサルです」


「ワンワン!」


 洗脳だ。

 ピンクが綻びの生まれた関係を再構築するために洗脳を掛けている。

 こんなに恐ろしい光景を俺は今まで見たことがない。


 いつの間にか、精霊から犬にジョブチェンジしたカエサルが、青い顔で「何とかしろ」と口パクしている。


 ふざけんな、ムリムリカタツムリだよ、チクショウ。

 あれはもう俺の知っているピンクじゃねえ。

 完全にお修羅になってしまった、何かだ。


「うう、頭が……。おぼろげじゃが、お前は鬼嫁、そこの女子はかわいいチャンネーだった気が……」


「フフフ、メリビ様たら冗談がお好きなんですねえ。私が鬼だなんて」


 虚ろな目でそう呟く精霊様の首元に、クリムゾンがニコニコしながら抱き着く。

 クリムゾンの腕と肩が精霊様の首の骨とこすれているのか、聞えてはいけないギリギリという摩擦音が聞こえる。

 しばらくするよ精霊様は白目を剥いて昇天。

 クリムゾンが離れると、完全に場外に移動していた瞳が白目の中にイン。


「儂は誰? お前は何奴?」


 昇天の衝撃で記憶を失っただろう精霊様が再度クリムゾンに尋ねる。


「フフフ……」


 ヒェ……。 ピンクの野郎、完全に洗脳できるまでリトライする気だ。

 奴はダメだ。

 完全にダークサイドに落ちている。


 このままここに留まっていたら、俺まで犬にされかねん。

 そんなの絶対嫌なんだワン!


 俺は精霊様とカエサルを見捨てて、森から離脱した。



―――




 その後アダルマンティーに頼ろうと思ったが、見当たらず、仮面Z子さんに頼むことにした。

 受ける前に試合をやらされたが、しばらく俺の身体を切り刻むと満足したようで同行してくれることになった。


 我々ガイア一向は、俺、幼女、Z子、キ〇ガイから派遣された御者兼ガイドのドロネコという布陣になった。


「皆さん、ここはド・マタギラスが住むマタギの森。くれぐれも大きな音は出さないでください」


 ドロネコは森に入って、すぐにそういった。

 馬車の中で紅茶を飲んでダラダラしていた俺らは、少しその声にぎょっとする。


パリン!


 幼女の手からカップが落ちてしまった。


「Grrrrruuuuuuuuuuu!」


「ああ……!」


 幼女が「ふぇぇ。どうしよう」みたいな顔で俺を見上げてくる。

 やめなさい。戦闘能力のない俺を見ても無駄です。


「Z子さん、すいませんがマタギラスを撃退してもらえますか」


 仮面Z子は「え、今紅茶飲んでんだけど」みたいな顔をすると、今までちびちび飲んでいた紅茶を一気して馬車から出ていた。


 バリバリ、ドカーンみたいな音が鳴ると、「キャイン!」という怯んだ獣の声と地面を踏みしめる音が聞こえた。


「待て! 旅人を襲う害獣の貴様はここで討伐させてもらう」


 Z子は謎の正義感に捕らわれたようで、こちらのオーダーを越えて討伐に入ってしまったようだ。

 そんなにしなくていいぞということを伝えるために、馬車の外に出るとそこに二人の姿はなく、代わりに少し離れた地点で土煙が上がった。


「Gyaaaaaaaaaaa……!」


 マタギラスの断末魔が聞こえた。

 もう倒してしまったらしい。

 早く帰りたい俺にとっては時間がかからなければそれでよかったので特に問題はない。

 戻って来るのを待つか。


~15分後


 さすがに遅い。

 100mくらいの距離なのにそんな時間がかかるか?

 いやかかるはずがない。


 おおよそ、紅茶畑でも見つけてラリってるのだろう。

 まったく、職務中だというのにたるんどるやつだ。

 とっちめてやろう。


 俺がずんずん、土煙が見えた地点に進んでいくとデカい熊の死体と、銀色の髪の少女が居た。

 だが肝心の仮面Z子がいない。

 仕方ないのでなんか関係者ぽい少女に聞くことにする。


 なんか眼帯して、右腕が包帯グルグル巻きの中二病ルックなので、ちょっと怪しいが話くらいは出来るだろう。


 こちらが近づいていくと、少女はニヤニヤし始める。

 少し病的なニヤつきに見えないこともないが、陰キャ特有の緊張で頬が強張るあれだろ。


「ガイア、姉さんの使徒はこちらで処分しておきました」


 中二病はいきなり俺の名を読んだ挙句、わけのわからない言葉を口走る。

 中二病スラングのようなものだろうか。


「あなたも早く本来の才能を覚醒させて、魔王になってください」


 中二病は少し興奮気味でそう言い募る。

 まったくわけが分からなくて発狂しそうだが、冷静に考えろ。

 中二病スラングを読み解いていくのだ。


 おそらく姉さんはZ子、それで使徒は熊。

 こうすれば、第一声はZ子はマタギラスを討伐したよとなる。

 そして、第二声はお仕事頑張ってくださいという意味だろう。


 なるほど、この中二病はZ子の伝言を俺に伝えているのだろう。

 俺がガイアと知っているのはその時に聞いたということか。

 そしてZ子の伝言に奴がどさくさに紛れてバクれたというメッセージが込められているこを俺は理解した。

 とんでもねえ野郎だ。

 帰ったら奴の紅茶の供給量は半分だ。


 一応、中二病もちゃんと伝言を伝えてくれたし、奴の作法で礼をいよう。


「おお、邪なる女神よ! このガイアに祝言をたまわすとは光栄の至り!」


「ふ、さすがに私の使徒だけはあります。察しがいいですね。一度見ただけで私が邪神だと見抜くとは」


 中二病は存在しない邪神なる神のことを口走り始めた。

 話しが長くなりそうだな。

 たったとお暇させてもらおう。


「では早速、このガイアめは魔王としての活動を始めたいと思います」


「いいですね、今回のガイアは威勢がいいです。期待してますよ」


 俺は適当なことを言って、馬車に向けて歩いていく。

 中二病の愉快そうな声が聞こえたことから、あれだけでも十分満足したらしい。

 我ながらナイススラングだ。


 護衛がバクレったせいで、うちのパーティーには非戦闘員しかいない。

 だがもうガクエンは半分ほどの距離だし、リスクはこのまま進んでも、引き返しても変わらない。

 ならばこのまま進むのがしかないだろう。


「ドロネコさん、早馬でガクエンに移動してください」


 俺はドロネコさんにそう頼むと馬車に乗り込んだ。





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