1話 ホモとの同衾……なにも起きなかったのが奇跡のようなものだ
すいません、町内会の芝刈りに駆り出されて、投稿遅れました。
確かにそこに居るというのに、暗闇に紛れて見えないホモ。
肌肌しく危険な状態だ。
どこから奴が来るのかわからない。
こっちは接触した瞬間に終わりだというのに……。
俺は組み付かれた時のシミュレーションをしつつ周りを警戒する。
「ごめんね、……迷惑をかけて。私がガイアを巻き込まなければこんなことにならなかったのに」
するとホモは徐に語り始めた。
奴はピロートークを大事にするタイプらしい。
それにしてもピロートークの内容がひどい。
迷惑をかけたからレ〇プするぞってお前……。
迷惑をかけたと思ってねえだろ、コノヤロー!
「こんなことを聞いてもしょうがないと分かってるんだけど、アダルマンティーとの婚礼についてどう思ってるの?」
どうやらホモは前から唾をつけていた俺がアダルマンティーと結婚するのが不安らしい。
その証拠に奴の声は先ほどよりも近くに聞える。
こちらに身を乗り出しているようだ。
ちょうど月が雲から出たようで、月光でホモが前傾姿勢になってこちらの顔に至近していることが分かった。
この状態はまずい。いつでもホモのターンに持っていける体制だ。
俺の背中に冷や汗が流れる。
奴のトークに乗って、ヤラナイ方向に持っていくのがベストだが、残念ながらホモとのピロートークの 経験のない俺には至難の業だろう。
俺に残された選択肢は力業しかない。
前傾姿勢のホモの肩掴んでひっくり返して奴の背をこちらに向かせると、抱き寄せる。
百戦錬磨のホモもさすがに驚いたようで、身を強張らせた。
男を懐に納めるなど、暑苦しいことこの上ないが、奴のホールドするにはこれしかない。
ああ、なんてこと……。背中越しに興奮して早鐘を打つホモの心臓の音が聞こえてきちゃう……。
もうホモは爆発寸前だよ、コノヤロー。
奴を落ち着かせるために、アダルマンティーの婚姻については可もなく不可もなく答えるか。
ついでにピンクにセラピー効果があると評判のフェザータッチをホモの頭皮にお見舞いしておこう。
「約束は守る……」
「ガイア……」
婚姻したいわけじゃないけど、しないといけないからしょうがなくするんだからね!というニュアンスで言うと、強張ったホモの身体から幾分か力が抜けた。
よし! あと一押しだ、あと少しで荒ぶるホモを抑えられる。
止めのフェザータッチを奴の頭皮にかける。力の加減が難しいので注意が必要だ。
強くやりすぎたらホモの機嫌が悪くなるし、奴の毛根にダメージが入る。
日頃困らされているとはいえ、ハゲにするのは心が痛む。
俺は細心の注意を払いながら、ホモの頭を撫でていく。
しばらくするとホモは完全に虚脱して、身体を預けてきた。
ふう……。やっと諦めたか。
俺は月光を反射して白く光る顔を覗くと、目を閉じていた。
諦めるどころかこれは寝てるな……。
やっとホモの呪縛から解放されたようだ。さて、ここから脱出するか。
そう決断すると俺は自分が迂闊だったと気づいた。
俺は今ホモと密着状態。動けばホモが起きてしまう。
何てことだ。
これでは朝方までホモと密着耐久レース確定だ。
とんでもねえ拷問だよ。
「うぅん……」
ホモは幸せそうに寝息を吐く。
フフフ、ホモったら幸せそう。俺はお眠なのに寝れないというのに……。
~翌朝
俺は目を開けると自分が気付かないうちに眠っていたことに気付いた。
すかさず、ケツをさわるが奇跡的にガバガバにはなってなかった。
ホモは俺が寝ている間に目を覚まさなかったようだ。
俺はホモに目を向けると絶句した。
そこにはホモの顔をしたネグリジェを着た美女が居た。
何が起こっている?
ホモはついに性別の壁を超える術を身に着けたとでもいうのか……。
いや、ガイア冷静になれ。
奴はホモ。だがしかし、身体は女。
つまり、奴は最初から女の子だったということだ。
……。
俺はもう一度間違いじゃないかネグリジェのホモを確認する。
うん、女の子だ。
金髪のセミロングに、起伏の小さいけど確かにある胸、そして男としてあるはずの膨らみのない股関節。
純度100パーセントの女の子だ。
なぜ気づかなかった?
男装しててもさすがに気づくだろうに……。
俺は自分に対する大いなる疑義と、女の子のホモが必死にこちらにアピールしていた記憶が思い出され、何とも言えない気分になる。
徐々にホモへの申し訳なさがこみあげてくる。
うぅ、俺ってやつは……!!
すまねえ、ホモ、ホモォ、ホモォォォ!!(号泣)
なんてことだ、昨日の夜なんかビッグチャンス到来だったじゃないか。
くそ、昨日ホモが女の子だっていてくれたら、「お前、女の子だったのか、ホモ!!」とか言ってあげられたのに。
涙で前が見えねえ。
俺が号泣していると、部屋の扉が開けられた。
ノックしろよ……。
「ガイアさん、偽王女の件で話があります」
ウォージマは隣にいるホモにも動じず、そう宣った。




