13話 己の尊厳をかけた麻雀
「ゼウスさんたち何でこんなところにいるんですか?」
「お前に告白する相手を抹殺するためにお前の後を尾行していたからだ」
ヤダ、この子コワイ。
「いや抹殺しないでくださいよ。ゼウスさん僕が幸せになることなんで全力で妨害するんですか」
「仕方ないだろ。お前が幸せになると私が不幸になるんだよ」
ヒェ、この行き遅れ、同志の幸せに不寛容すぎる。
「おお、七瀬、コノヤロー!」
「イダダ、やめて、やめて、やっぱりこの人頭おかしい!」
ゼウスちゃんの嫉妬に打ち震えていると、アンドーがロン毛の腕を捻りあげている様が見えた。
奴は何をやってるんだ……。
まあ多分ほっといても大丈夫だろ。
「ガイア君、身内の子達への挨拶も終わったようだね。じゃあ私たちとの勝負を始めようじゃないか」
「勝負?」
「なんだジョン君から聞いていないのか。ここは選ばれしアイドルプロデューサーのみが訪られる雀荘バンバン。ここに来たプロデューサーは己の尊厳を掛けて麻雀をし、他の大手企業のマネージャーに勝つことで援助を受けることが習わしになっている」
「断ることは出来ないんですか?」
「もちろん可能だが。これは私たちプロジューサーにとって神聖な儀式そのもの。それを否定することがどういうことを引き起こすかは言うまでもないことだろう」
「つまり実質、ここで麻雀する以外の選択肢はないということですか」
「ふ、理解が早いじゃないか。早速勝負に入るとしようか」
「ゴリプロのゴリーマツモトさん、タチが悪いですぞ。よもや成功した先のことだけしか教えないとは。敗北の先のことも教えなくては」
「クウ」
ガタイの良いおっさんに細身のおっさんがそういうと、茶髪の青年がうなった。
「この人は特例枠で来た人ですが、結局敗北者の行き着く先は同じこと。融資の代わりに私の靴を舐めてもらいましょう」
「クウ」
「うなってもどうにもなりませんよ。早く舐めるのです!」
靴ベロォ!
「あまあぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!」ベロベロベロォ!
す、スゲエおっさんの靴を凄い勢い舐めてる。
これには舐めろと言ったおっさんもドン引きだ。
よくわからないが負けると凄いことが起きることは分かった。
「そうですか。僕は負けませんので構いません」
―|―|―
1セット目
「ロン!」
「く、際物だとは思っていたがここまでとは、仕方ない上着を脱ごう」ヌギヌギ
「あり得ない。麻雀歴1年のベテランの私がこんなルーキーに負けるなんて……、仕方ないズボンを脱ごう」ヌギヌギ
「クソ俺のドラが、仕方ないパンツを脱ごう」ヌギヌギ
ゼウスちゃんたち見ててくれ!
この勝負必ず勝って俺がお前たちを真のアイドルにしてみせる!
一方ゼウスたちは……
「いせせの1! イエェェェイ、私の勝ち!」
「卑怯ですよ! ゼウス! 自分だけ上げないなんて!」
「キールもやり直してほしいな。 ゼウスさんもっかいやり直して♡」
「ヤダ!」
2セット目
「ツモ!」
「クソ、私の方が有利だったのになぜ!? ズボンを脱ぐ!」ヌギヌギ
「キャリアの私がこんな初心者に負けるなんて……、上着を脱ぐ!」ヌギヌギ
「俺のドラちゃん……、カツラを脱ぐ!」ヌギヌギ
ふうぅ、危ない局面だった……。
だがそれでも乗り越えた!
アイドルへのヴィクトリーは間近だ、ゼウスちゃんたち見ていれ!
一方ゼウスたちは……
「叩いて殴ってジャンケンポン!」
ボコォ!
「イエェェェイ! 私の勝ち!」
「頬が痛いです! ゼウス、私に謝りなさい!」
「キールも今のはゼウスさんが悪かった気がするから謝ってほしいな✩」
「ヤダ!」
3セット目
「ふ、流石に運が悪かったようだなガイア君、私が勝たせてもらうよ」
「何を言ってるんですか、ゴリーさん! 盤面をみってください!」
「こ、これは伝説の型、「バンメンズリサリン」!!」
「ロン!」
「「「グアアアアアア、負けたアアアア!」」」
全裸になってテーブルからおっさんたちが吹っ飛ぶ。
―|―|―
「やりましたよ! ゼウスさんたち勝ちましたよ!」
「私に謝れぇぇ!」
ボコォ!
「ヤダアアア!」
ボコォ!
「キールも巻き添え♡」
ボコォ!
人が頑張ってたのに何やってんだこいつら……。




