6話 俺がビックになったらお前を養ってやるよ
「ふう、流石にあれだけ激しく動いたし。寝相も解消されたよな」
翌朝、俺は顔を洗いに外に出た。
するとまさかの光景が目の前に飛び出した。
「嘘だあ! 僕はこんな寝相信じないぞ!」
凧に括りつけられて空を飛ぶパパとその真下で爆睡するゼウスちゃん。
もはや恐怖しかわかない。
「おいおい、昨日あれだけ動いたんだ……。寝相がでるわけ……」
後から出てきたアンドーがそれを見て目を見開く。
「うああああ! 寝相だぁぁ!」
―|―|―
「これは一体どういうことなんだ……」
「いやお前の推測が間違ってただけだろ。運動不足関係ねえよアレ」
「間違っているていても他に何か原因らしきものに心辺りがあるんですか?」
「いや無いけど」
じゃあ否定しないでよ……。
「まだ早まる時期ではありません。アイドルとしての環境を整えて、より体を動かせる状況を作り出してから考えるべきです」
「あれ以上の状態て言っても、具体的に何するんだよ」
「メンバー集めです。巷のアイドルと比べて我々カタストロフダージリンは構成人数が少なすぎますからね」
というわけで、俺は構成員を確保するために街に繰り出した。
町中のやたらスマートな箱の表面をいじりまくる住民に聞いたところ、アイドルは地下にいるらしく、地下に突撃する。
「テイム!」
ボゴーン!
地下施設崩壊!
地下アイドル100人確保!
アイドルの山を担いで、孤児院に戻り、また別の地下施設に潜る。
「テイム!」
パシイ!
拳圧でテイムを行おうとすると何者かに弾かれた。
弾いた相手は見るからにダメそうなオーラを放つ長い黒髪を垂らした男だった。
「地下施設はセブンスリーバーが管理しているものだから、ガイア君壊したらダメだよ」
「いえ、アイドルを集めてたら勝手に崩壊して。きっとクリムゾンという精霊の仕業でしょう」
「いやいや、彼女うちのアイドルだしそんなわけ……。いやよく考えればそうでもないわ。後で調べよ」
「では僕はこれで」
「いやいや待ってよ。アイドル集めてるんだよね。じゃあこの子とかどう。ほらハーちゃん出てきて」
ロン毛マンはそんな事を言いながら、眼帯をした厨二チックなポニーテールを自分の影から取り出す。
以前ママたちの密会の席にいた厨二病だ。
「あなた前会いましたよね……」
「そ、そんなことないんだぞ。は、ハーちゃんは闇の存在だから常世の存在とはかかわりがないんだぞ、ブイ」
真っ赤な顔でプルプル震えながら、ウィンクに横Vサインを沿える中二病。
あらやだ、この子無理してる……!
「まあとりあえず、そういうわけだから、その子君の所にあげるよ。僕ちょっと忙しいからここでバイバイするね」
俺が謎の切なさに襲われているとロン毛マンが踵を返して去っていく。
「あ、だめだ僕。そういや、財布もってないや。ハーちゃんごめん駐車代くれない」
「七瀬。ちゃんと返して下さいよ」
そんなことをいいながら戻ってきたロン毛マンに金銭を渡す中二病。
ダメなバンドマンに貢ぐ紐にしか見えない。
「いやいやハーちゃん。僕七瀬じゃないよ。ジョンだよ」
「そう言えば、そうでしたね」
「気を付けてね、もう」
そんなことをボヤくとロン毛マンは本当にリターンしていく。
「……」
「……」
残された我々は真顔で向かい合い、黙る。
とりま中二病ゲット。