4話 ドメスティックバイオレンス
竜が飛んでいるのか、地面に耳を着けてソナーしてもそれらしい音が聞こえてこない。
「うーん……。全然聞えませんね。空飛んでるにも滑空時間が長すぎますし、一体どういうことやら」
「心音が聞こえないか。あまりいい予感がしないな」
「どうせ封印されてるとか、石化してるとかそういうのだろ。そのうち悪の首魁みたいなのが封印解除するだろ」
「悪の首魁、魔王本人がここにいるのにそんなこと言ってもしょうがないだろう」
えぇ……、ゼウスちゃん人のこと悪の首魁だと思ってたの……。
何も悪いことしてないのに理不尽すぎる。
「ゼウスさん、僕のどこが悪の首魁だというのです。僕はこれまで悪事など一度も行ってきたことなどありませんよ」
「どの口が言う。……約束は破る。女を見つけるとすぐに目移りする。私に十分な紅茶代を支給しない。美少女専門テイマーとかいう存在自体が恥のような職業を取得している。毎朝起きると寝室をグチャクチャにしている。私が知っているだけでもこれだけある」
「ゼウスさん。後半僕の悪事じゃなくて、タダの不平不満な上に、最後のに至ってはあなたの悪事ですよ」
「え、私が寝室をグチャクチャに……!?」
ゼウスちゃん今まで自分じゃないと思ってたのかよ、マジか。
「俺はとんでもねえ奴がこの世の中にいることを知っちまったよ……」
アンドーが宇宙の真理を見てしまったような顔をして、そんな事をボヤく。
「諦めてはいけません。我々に残された道はまだあるはずです」
「そうだな、俺たちにはまだエアロビクス教室がある……」
~一時間後
「(帝龍が)見つからないな……」
「(エアロビクス教室が)見つかりませんね」
「くそ! どこなんだよ(エアロビクス教室)!」
なんてことだ、街中を歩きまわったというのにエアロビクス教室など一つも見つからない。
くそ、エアロビクスはこの国には存在しないということか。
他に代替案を出さねばならない。
「周りに何か、代わりになりそうなもの」
「「「あたしたち、NTR抹殺系アイドル ドメスティックバイオレンスです! それでは聞いてください。『あたしの旦那がNTRてる!』」」」
そんなことを考えていると広場の人だかりの中でクリムゾンらしき女と船の時に奴と共にいた女たちが激しい歌とダンスをし始めた。
俺の脳裏に電撃が走る。
「これだ!」