2話 『村コン』
村コン。
イクタ―領アルズ村で行われる村おこし兼合コンイベントだ。
目の前で開会のあいさつをするヘルメスの言によれば、先代当主から始めたイベントらしい。
ルールは至極単純。
グループまたはペアを組んで村内をぶらついて、そこで思いついたアイデアをそこいる商人、農民、兵士に進言。
アイデアを聞かされた方はそれの出来栄えに応じて、進言者のいるグループにポイントを与え、その中で実際に気に入ったものを採用するというものだ。
定員は1グループ4名まで。
最優秀グループはイクター家の寵愛――人材、資金、建物などの援助が約束される。
合コンでイメージを緩めながらも優勝報酬が報酬なので、ほどほどに緊張感のあるイベントと言ったところだろうか。
村の広場で領主のヘルメスの挨拶が終わるまで、俺は周りの様子を眺めて時間を潰す。
周りには初々しい感じで自己紹介する若い男女たちや、もう準備万端だよと言わんばかりに静観する奴ら、談笑しながら作戦会議的なものをしている奴らがいるのが伺えた。
自己紹介組は合コン特化のライト層、準備万端は優勝狙いのガチ勢、作戦会議はメリハリ柔軟型で分が悪けりゃ合コンよりに、分がよければ優勝よりにみたいな感じだろうか。
まあやはりというか、自己紹介組のライト層が一番多い。
若い男女でそこまであとさきが見据える連中はそうそういないだろう。
俺はこれからガチガチビジネスマネジメントだというのに、楽しそうにしやがって。
さりげなく、ボディタッチ決めすぎだよ。
イライラしてきたな。『ラブサンシャイン』撃っと。
光線をイチャイチャラプソディーな女たちに撃つと、巧みな体裁きで避けた。
堅気の動きに見えねえ……。
どうやら彼女たちはすでに合コンという名の戦場で戦う愛戦士に代わってしまったようだ。
「何やってんだい、あんた! 仲間が挨拶してんのに、ちらちらよそ見して! 頑張って言ってんだ見てやんな!」
奴らの駆け引きに目を奪われていると、アダルマンティーに叱責された。
姉御肌ここに極まれりだ。
二代目でもそこはちゃんと継承していたようだ。
無視したら、肩パンされそうだし、ちゃんと聞いとくか。
「今回の村コンでは――」
「儂ら『オワリオダーズ』は商人の下に行くからのお。貴様ら『ガリアジミーズ』は泥臭い荒地にでも行って、精進料理でも作っておるがよい」
「メリットビリーブ様素敵ですう!」
「ふふふ、メっちゃん。『ガリアジミーズ』じゃなくて、『ガリアシーザーズ』よ。お米の食べ過ぎで頭がリゾットになっちゃたのかしら。荒地だろうが、活火山だろうが、海底5000メートルだろうが、どこでも行ってあげてもいいわよ、最後に勝つのは主催者自身が所属する私たちなのだから」
「ほほほ、こやつ良いよるわ!」
「先代の頃から行われるこの村コンで――」
「ふふふ」
「ほほほ」
「ふふふふ!」
「ほほほほ!」
サイドがうるさくて、挨拶が聞えねえ……。
笑い声で喧嘩すんなよ。
ピンクの進言で完全に泥沼化してますね、これは。
最後には「合戦じゃあああ!」とか言って、カエサル、アダルマンティー、ヘルメスたちと総力戦になるんじゃねえだろな。
嫌すぎる。
俺がそんなことを想像しながら、挨拶を眺めているといきなり肩を叩かれた。
誰だよ?と振り向くと黄金の矛を携えた仮面の女が居た。
あ、これは察し……。
話しを聞いたら、ダメなパターンですね。
俺は体を前に向きを前に戻そうとすると、女に肩を万力のような力でつかまれ、振り向かされた。
「競い合いたいのだが……」
女はそんな言葉をこちらに投げかけてくる。
そんな捨てられた子犬みたいな目で見られても……。




