32話 麩菓子はおいしいなあ
あの後何で断ったのかアンドーに尋ねると「龍なんかそのまま中に放り込んだら暴れられて中のアーティファクトが大変なことになるから」ということらしい。
至極真っ当な理由だけど、だからと言ってこのまま全身網タイツで公衆の面前に出るのはごめんだ。
はてどうしたものか……。
かくなる上は竜に昏睡してもらって、ネットの代わりに俺が拘束することで社会生命消失を回避することになりそうだが。
まだアンドーが街に行き着く前に見つけ出す可能性も無きにしにも非ずだ。
「全然見つかんねえな。うん、なんだこれ、麩菓子……? 食い物か? 一つ齧ってみるか、うん!? なんだこれ! ウメエ!! まだまだいっぱいあんじゃねえか最高だな」バリバリバリ!
―|―|―
結論から言おう、街に行くまでに見つからなかった。
頼みの綱のアンドーは探していると思ったら、中で謎のダークマターをバカ食いしていた。
注意してとりあげて、探すように促したが、中毒性のある物質らしく、ダークマターがある俺の懐をずっとガン見しながら捜索している。
とんでもないオーパーツを発掘してしまったらしい。
俺は仕方なくブリーダー流奥義シツケ(グーパン)を行い、竜を昏倒させ首を脇に挟んで拘束している。
周りの視線が異様に俺に集まっているのを感じる。
すると
「ものども退けい!」
とか言いながら、マクロファージがやって来た。
ピンクのせいで負傷したと思ったがピンピンしているようだ。
このおっさんなんで俺のとこに来たんだ。
「魔王様!」
「ああマクロさんですか。ちょうどよかった。この竜を封じるものなにか持ってませんか?」
「帝龍を封じる!? 国の象徴を封じるとはどういうことですか?」
「いや、そのまま意味ですよ」
「……魔導国を完全に取り潰して、ディオグランドの一部になさるということですか」
いかんな、このおっさん自分の話に夢中で俺の質問を完全に無視している。
セールスマンといい、他国のおっさんは我が道を行かんとしまくるおっさんが多すぎるな。
とりまこれ以上付き合ってもしょうがないので、きりあげるか。
「まあ、そんな感じです。我々は急いでるのでではでは」
「そ、そんな魔王様! お慈悲をおおおお!」
俺はダッシュしながらそんなこといってその場から立ち去る。
早くヤ〇トのハッチの中にぶち込んで、この国からはとりあえずお暇させてもらおう。
「ガイア、あんたこんなとこに居たのねえ!! 不当な差別で傷ついた精霊の痛みを知れええ!」
するといきなりピンクが上空から現われ、飛ぶ炎刃をこちらに投げかけてきた。
こいつ、また妨害か、これで三度目だぞ。
さすがにゆるせねえ、このピンク野郎。
俺のテイムとか婚活とかうまくいかないのも、全部コイツのせいだ。
「うるせえ! お前のせいでテイムがうまくいってない俺の痛みを知れ!」
俺はとりま竜をクリムゾンに向けてぶん投げる。
「お! やっと発掘したぞ、龍脈石! おいガイ……。て何やっとんじゃ、ボケエ! ブレイブコード――」
すると背後でアンドーの歓喜の声と絶叫が一緒に聞えた。