30話 唐突にわかってしまったハウダニット
「こ、これは! 貴神様の居城におられる百四天王様たち! どうしてこんな!」
政府が崩壊して外に焼け出され、自分たちの神と邪な精霊の争いを見守っていたマクロ・ファージは驚愕した。
いきなり貴神の御所を防衛している百四天王たちが飛んできたのだ。
一体なぜこんなことに……?
マクロは急いで百四天王たちの様子を確認する。
百四天王たちの状態を確認すると全員生きているようで外傷も少ないが、意識だけ刈り取られていた。
パッと見、全員気を失っているようだが、誰か健在のものがいて、事情を説明してくれるものがいるかもしれないと思い、周りを探す。
するとそれを発見した。
「これはダイイングメッセージ!?」
生きているのにダイイングてなんだと思いながらそれをマクロは確認する。
「犯人は……MAO。MAO? は!! 魔王ということか!! だが政府崩壊とともに空のかなたに飛んでいき、奴は死亡したはずだ、そんなはずは……」
当時のことを思い出す。
たしかに奴は目の前で攻撃に当たり、座った状態のまま空の彼方に飛んでいたはずだ。
そんなはずは……。いや、待ってよ……。
そこまで思い出すとマクロは不審な点に気が付いた。
普通不測の事態に遭遇して、眉ひとつ動かさないてことはあり得ない。
つまり魔王の中であれはあらかじめ予定されていたということだ。
今貴神と戦っている精霊と奴はグルだったのだ。
だがなぜ奴はそんな手間のかかることを?
「マクロ様、大変です。陛下が怪しいと思い、国民解放軍のアジトに行ったところメンバー全員が戦闘不能になっていました。もう私には何が何だか」
「なにぃ!? ああ……、そ、そういことか」
そんなことを考えている中、部下からの報告があり、マクロは全て理解した。
魔王はこの国の自分に歯向かう者達の芽を摘みに来たのだ。
国民解放軍の壊滅。
政府崩壊。
貴神の居城の襲撃。
そして現在行われている配下の精霊を使った貴神の打倒。
事実これだけのことを魔王はやったのだ。
それ以外にあり得るだろうか?
いや、あり得ない。
奴は視察などの為にここに来たのではない。
自分の支配を盤石とするためにここに来たのだ。
やつの狙いは魔王の命令を絶対順守する国家の確立――絶対魔王政国家の確立だ。
「あたしの勝ち。次までに自分が負けた理由を考えておくことね。じゃああんたのネクタル頂きます」グビグビグビ!
「グウ……。妾としたことが……」
するとマクロのその考えを証明するように、精霊が貴神を打ち倒し、アイテムをか攫っていた。