19話 年収とファ〇クによる高度な心理戦
魔導国丘陵地帯コインスから魔導国の景色を一望する。
するとやはりピンク頭の精霊が町中を闊歩していた。
「やっぱり七瀬のとこの精霊がいたかあ、面倒だな。魔導国のジジイどもの頭でも弄ることにするか。成功率は低いけど、前取り逃しの外回りジジイをやった時も失敗しなかったからな。まあ今回は一桁で処分するのは収まるか」
心底面倒だと思いながらとりあえずの計画を立てる。
面倒だということで思い出したが、最近異世界に飛んだり、こっちに来てそれとなしにアプローチを掛けたりと大忙しだ、休みが欲しい。
「頼みの綱が人の言うこと聞かんからな」
こっちはあっちの精霊に干渉できないというのに、干渉できる精霊であるあいつが使い物にならないのが忌々しい。
こんなはめになっているのも七瀬のクズがこっちの精霊が勝ったときにルールを変えたせいだ。
思い出すだけでイライラがこみあげてくる。
「クズが調子に乗ってんじゃねえぞ……。見つけたら絶対にブチ殺す」
―|―|―
「陛下よく聞いてください。私の年収はこいつの五倍。つまり信頼もこいつの五倍と言うことです」
「ファック! 適当言ってんじゃねえよ。お前は政府の人間なんかじゃねえ、俺こそ政府の人間だよ。なあ分かるよな魔王?」
甲板に上がってきた暑苦しい男二人組はどちらともが政府の人間だと名乗り、小競り合いを続けている。
どちらも胡散臭いことこの上ないので、判断が難しい。
「どっちなんだ……?」
「……」
俺は困ってゼウスちゃんを見つめると、彼女がずっと年収男の頭頂部を凝視していることがわかった。
何を見ってるんだ一体。
不思議に思って俺もゼウスちゃんと同じ様に奴の頭頂部を凝視する。
すると奴の髪がファックマンと言い争うとともに後退していくのが見えた。
ヅラ!?
「き、貴殿たち!! なぜ私の頭を見っているんです!?」
年収男はこちらの視線に気づくと、頭を手で押さえて更にヅラがずれる。
「もしかして、疑っているんですか!? これは地毛です!! ほら見てください、地毛地毛のゲジゲジでしょう」
ズレて露出した頭皮を男はこちらに見せつけてくる。
それ以上自分の首を絞めるのはやめろ……。
「嘘をつけ、このハゲ! 自分の髪を偽るような奴が信用できるか!」
俺が年収男を痛々しいなと思いながら見つめていると、ゼウスちゃんが辛辣な言葉を吐いた。
偏見の塊だぞ、それは。
なくなったらヅラ被りたくなるでしょ……。
「ゼウスさん、ナイーブなことなのでそんな極論で話すのは……」
「ガイア! 私はこのファック野郎を信じる! お前はどうだ?」
いやどうだって言われても。
判断材料がまだ年収とファックとハゲしか出てきてないから分からないよ。
いや、でもよくよく考えれば、お役所仕事で頭皮にダメージがいったかもしれないし、部下もなんか丁寧そうな感じだし、そう考えると年収男ポイよな。
「そうですねえ、難しいところですけど年」
「お兄ちゃーん!! 包囲殲滅されかけたって聞いたけど大丈夫!?」
「おお、ファック! マリーナじゃねえか! 俺が心配に駆けつけてきたのかよ、無茶しやがって!!」
「はあ!」
なんだあの愛され系女子は!
これはファックマンが政府の人間で間違いない。
「お兄さん、あなたが政府の方ですね」
両手ガシィ!
「お、お兄さん……? お、おお! そうだぜ、ファック!!」