17話 魔導国にダイナミック着陸
魔導国プリミステ公会堂
「ファァァァック! 何が『話しあいしよう』だ! 包囲殲滅かけてきてるじゃねえか! おお、ファアアアアック!」
パキュンパキュンバンバン! ギャアアアア! やったぜ!フウウうううう!
マゼンタは公会堂の薄い壁に隠れながら、時折窓から身を出し、魔導銃で敵を掃討する。
公会堂は魔弾を射出する音と兵士たちの野太い悲鳴と歓声でまさに阿鼻叫喚といった感じだ。
マゼンタはミルフィとか名乗った女の言葉に従い魔導王たちを追い詰めた事を今まさに後悔していた。
あの女狐は「貧しい人間たちが救われる素晴らしい国が出来る」と言ったのに、現状はこのざまだ。
魔導王はディオグランドの方針に従うといってすべてを放棄して自分の研究施設でよろしくやって、新たなリーダーを国民の中から選出するという段になったのに選出されそうになるたびに政府サイドの息のかかった連中によって暗殺と抗争が起こされる。
マゼンタの出身の貧民街の子供たちも奴らに利用され、内戦の結果はあの女が言った耳心地の良い言葉とは正反対だ。
貧民街を救うどころか、どこにいるかわからないスパイや裏切り者で我が身さえ風前の灯火。
マゼンタの右腕のイクラホボビッチによると、もうすぐディオグランドの魔王がこちらに視察にきて、政府の連中はマゼンタたちを鎮圧に掛かる助力を進言する心づもりらしい。
そうなればここを乗り越えても、つみだ。
純粋な武力で弾圧される。
「マゼンタさん! イクラホボビッチが重症です! このままじゃコイツぅ!」
「ファック! ポーションぶっかけとけ! それでそいつは治る!」
「でももう死にかけでとてもじゃないですがポーションでは……」
「もたもたするな」
新人のバリールを横にのけて、懐のポーションをイクラホボビッチにぶん投げる。
「復活したぜ! イヤフゥゥゥゥゥ!」
「嘘だろ……」
「ボーとしてないで正面の奴ら蹴散らしこい! ファック!」
マゼンタは部下に指示を飛ばすと、先のことを考えるのはやめた。
つみだろうが、部下たちをまずここから生還させることが最優先なのだ。
どうしようもないことはそのあと考えればいい。
再び窓から魔弾を放とうとすると、突然影が正面に生じ始めた。
何事かと思うと
ドカーン!
と何やら馬鹿でかい鉄の船の様のようなものが落ちてきた。
正面の敵はその場から逃げたが落下の衝撃によって、ほぼ無力化された。
「船なのになんで地面に……。アンドーさんこの船めちゃくちゃですよ。ほんとにこれ、魔導国に到着したんでしょうね」
「当たり前だろ、お前。ヤ〇トだぞ、ヤ〇ト。松本〇士を信じろよ」
「松本何某については知らんが、魔導国の国旗が飾られた家が目立つ。おおよそここは魔導国で間違いないだろう」
護衛二人を連れて鉄の船から出てきた男の姿を見て、マゼンタは空いた口がふさがらなくなった。
「ま、魔王……!?」