16話 ステータスが高ければ大概どうにかなる
朝によって目を覚ますと目の前が真っ暗だった。
どういうことか分からなかったがとりあえずもがく。
バキィ!
すると破砕音が聞こえて、体が上方にバウンドした。
どうやら床にめり込んでいたらしい。
周りを見つめるとアンドーを抱き枕にしているゼウスちゃんと、盗賊にあらされた後のような部屋が目に入った。
「伝説で……アーティファクトな……紅茶……」
「ううぅ……」
ゼウスちゃんが願望の駄々洩れな寝言をつぶやくと、洗脳に抗う兵士のような呻きをアンドーが上げる。
凄まじい光景だ。
これが一人の寝相から作り出されたと思うと、驚きを禁じ得ない。
―|―|―
「ガンバエー!」
身支度を済ませると我々は、眼鏡のお陰で玲子様のうさん臭い遍歴はもうわかったのでタカナシの講座を断り、アンドーの船作成の応援もとい監視を行うことにした。
これで奴のガバガバ組み立てスケジュールが改善され、今日中にはこの島をたてるはずだ。
「頑張れていわれなくてもがんばてるぞ」
アンドーはブツクサとどこぞの受験生みたいなことを言うと溶接を続けていく。
我々は方や砂弄りをしながら、方やどこから出現させたのか分からない紅茶をがぶ飲みしながらそれを見つめる。
というか、そろそろ砂弄って山作るのも飽きてきた。
もう一時間経つからな。
単純計算で船が出来るまで一、二時間だが、退屈でしょうがない。
「アンドーさん、すいません、暇つぶしのアーティファクトとかありません?」
「いやまずお前暇なら手伝えや」
「……」
まあそれはそうだけど、船のことなんて知らないから無理だろ。
「船組み立てたことないから無理ですよ」
「俺が教えればすぐできる。ささっと紅茶マンと一緒に手伝いに来い」
「じゃあ手伝いますかね」
俺は砂浜から腰を上げると紅茶マンのところに手伝いに行くように促すことにする。
「ゼウスさん、手伝いに行きますよ」
ガポガポゴクゴク!
おかしいなあ、催促したのに紅茶飲む音しか聞こえない。
ガポガポゴクゴク!
「ゼウスさん、ちょいきま」
バシィ!
ゼウスちゃんを船まで導こうと手を伸ばすと弾かれた。
ダメだ、こいつ。ただのお茶のみマシーンになってやがる。
しょうがないので、俺だけ手伝いに行くことにする。
「ここをこうやって、こうして、こう!」
するとアンドーが実演して教え始めたのでこちらも作業を始めることにする。
~五分後
「ふぅ。船が完成しましたね」
「いや、お前いろいろとおかしいだろ。何で教えてないところまで10倍速くらいのスピードで仕上げられるんだよ」
「フフフ、僕は公爵ですからね。ステータス補正ですよ」
「この世界にそんな補正掛からねえよ」
アンドーが色々と困惑しているようだが、船が完成したのならこの島にいる意味など毛頭ない。
悪しき邪教徒の教えを教え込まれる前にここから早く脱出しなければ。
「早くこの船でここから魔導国に向けて出発しますよ、アンドーさん。僕はゼウスさんを回収してくるので、操舵の準備をしてください」
「ええ、もう今日疲れたし一日くらい休みてえよ」
「まだ一時間ちょっとしか動いてないでしょ。もっと頑張ってくださいよ」
「しょうがねえな。宇宙戦艦ヤ〇トみたいな宇宙船のワームゲートの準備するかあ」
よくわからん単語を連発していたがアンドーが了承したので、俺はゼウスちゃんを回収に向かう。
「おまんらあ! 何をしっとるんじゃあ、このレイコ―を出ていくというのかあ?」
しまったな、さすがにバレるか。
俺はゼウスちゃんをティーセットごと担いで甲板にハイジャンプする。
「よおく、外の世界が七瀬に支配されておって危険なことはあ、理解できたはずだあ。なぜそれなのにでってく? ワシらとともにここでレイコ―様に祈りを捧げることが最善だというのにい」
「いやその神話的な何か胡散臭いですし、七瀬にいろいろとしていることとかどうでもいいですし」
「ま、まってえ! このガイヤーカウンターがおぬすらに激しく反応しておるのだ。ガイヤーの生まれ変わりがおぬすらの中におる可能性が高いんじゃ」
タカナシは顔のタテガミを取って指で示すとそう叫んだ。
タテガミだと思っていたが、地毛じゃなかったことにひどく衝撃を受けたが、どう考えても嘘くさかったので無視して船内に入る。
すると防音加工でもしてあるのか、タカナシの声は聞こえなくなった。
「よし来たか、魔導国に行くぞ」
管制室に辿り着くと、謎のボタンをアンドーが捺した。
ビューン!
なぞの音がするとすぐに静かになる。
「魔導国に到着したぞ」
「何が起こったんです今……」