13話 ロイヤルホテルで大車輪
「ろいやるほてる……」
「なかなか味のある宿だな」
「いや、ただのボロ屋だろ」
俺がそこそこ古めかしい家に立てかけられた看板を読み上げると、二人が各々感想をつぶやく。
名前だけかよ……、ロイヤルホテル。
「そんなあところで、立ってないでえ、早く我が家「ろいやるほてる」の中に入れ。夕餉ならもう出来てるはずだあ」
俺たちはボンバーヘッドに促され、家の中に入ることにする。
中に入るとなぜだか、おじいちゃん、おばあちゃんを思い出す古めかしい匂いが鼻腔に入りこんでくる。
しばらく嗅いでいるとここはこれでいいような気がしてきた。
匂いの中にヤクの成分でも入っているのかもしれない。
ガツガツ! バシャーン!
夕餉を食べて、ゴエモンブロと言うなぞの浴槽に入れられると、いよいよ寝る段になった。
部屋の間取りが少ないために、一部屋に3人で雑魚寝する形だ。
ゼウスちゃんはこちらをチラチラ見ながら床に就き、アンドーは「水嶋ヒ〇が一匹、竹内涼〇が2匹、大泉〇が3匹……」と謎の呪文を唱えている。
俺もささっと、アンドーから取り上げた魔道具を例の場所に隠して寝るか。
―|―|―
「お前の婚期はもうすでに死んでいる……」
「はぁ!!」
あまりに不吉な言葉に飛び起きてしまった。
見ると寝息を立ってたゼウスちゃんが近くまで来ていた。
「なんだ寝言か……」
俺は額に張り付いた冷汗を拭くと、ダイナミックに移動しているゼウスちゃんをもとの布団の中に戻すことにする。
ゼウスちゃんに手を伸ばすとまた寝言をつぶやくようで唇が震えた。
また同じ言葉を口から出したら、口を手で塞いで窒息させるか……と心に決めるとついに口が動き始めた。
「なぜおまえは近くにダイナマイトボディの幼馴染がいるのに何もしないのか……」
「ダイナマイトボディ……。自分で言うか……」
ボコォ!
「寝相悪……!」
ボコォ!
―|―|―
「ハア……ハア……、ゼウスちゃん寝相悪すぎだろ。最後大車輪してきたぞ」
ゼウスちゃんの寝相であやうくヘブンズダイバーになりかけたが、何とか脱出してきた。
奴の寝相が停滞期に入るまで外で時間を潰す必要があるだろう。
そこらへんでも散歩してくるか。
そういえばアンドーの姿がなかったな……。