11話 タテガミ原住民
浜辺でわだかまりを解消した我々は、とりあえずの住居確保のために集落がないか探し始めた。
するとさっそく木に看板らしきものが立てかけてあるのを発見した。
人がいる証拠だ。
掠れと汚れで少し見にくくなっている看板の文字を読み上げる。
「ウロジマシ……」
「しまじ〇う……」
「……なぜ、逆から呼んだんです、ゼウスさん?」
「心理的トリックで逆から読むのが正しいかもしれないだろう」
「いい加減にしろよ。異世界のこんな島にベ〇セがあるわけないだろ」
「べ〇セ? なんですか、それは?」
島の名前だろう看板の文字から、なぜそんな固有名詞が出てきたのだ。
俺がアンドーの発言を心底疑問に思っていると近くにある藪が揺れた。
「なにものじゃあ、おぬすら!! ここで何をしとる!?」
藪から何やら出てきたと思うと、変なタテガミみたいな顔飾りをつけたおじいちゃんが出てきた。
おお、ここの住人のようだ。
なかなかに幸先が良い。
もいかしたら、青ダヌキに頼らずに船をゲットできるかもしれない
「ああ、このウロジマシに住んでおられる方ですか」
「うん? ウロジマシ? 何がウロジマシじゃ。ここはレイコ―じゃぞ」
「え、でもそこの看板に……」
「これはただの落書きじゃあ!」
看板バキィ!
タテガミじいさんは怒った顔で立てかけてあった看板をヒザキックで叩き割る。
看板さん、かわいそう。
「そ、そうなんですね。ではあなたはレイコ―に住まわれる方ということで」
「そうじゃ。ワシはレイコ―の神官のタカナシ。生まれてこの方ずっとこの島に住んでおる」
じいさんはアンドーと同じ様にイントネーションのいかれた変な名前を名乗った。
俺は思わずアンドーを見る。
「あなた、タカナシさんと名前の感じが似てますね。親戚かなにかですか?」
「似てるのは名前だけだ。こんな頭にタテガミつけたキテレツ千万な奴と俺が一緒なわけないだろう」
それから耳打ちすると奴はそう答えた。
「いや、タヌキの着ぐるみ着てったし、あなたも奇天烈千万でしょ……」
なんか関係がありそうだなと思いつつも、今聞いても突っぱねられそうなので、じいさんとのやり取りを優先することにする。
「僕たちは旅の途中で船が沈没してしまって困っているんです。できたら、船か寝床を下されると助かるのですが」
「この島には船などない! じゃが寝床なら用意してやらんこともない。ついてこい」
タカナシは怒鳴るような声音で船のことを答えると、我々を先導し始めた。
しばらくの宿を用意してくれるということなので、俺はそのあとを黙ってついていく。