10話 遭難遭難タイヘンダー
「まったくひどい目にあったぜ。じゃあ、間抜け共俺はここから退散させてもらう」
孤島に降りるとアンドーは例のブラックホールを再び生じさせると、また懐中時計を取り出した。
俺は取り出されらそれをすかさず、奪い取る。
「船を出してくれる約束だったでしょ。それはダメですよ。早く帰りたいていうんなら早く船を出してください」
「出すもくそも、組み立て式だから組み立てるのにしばらくかかるんだよスカタンが!」
次いで、船の催促をすると奴は逆ギレしてきた。
船から放り出されて、塩漬けになるところをレスキューしたというのにとんでもないヤツだ。
「組み立てるのはどのくらいかかるのだ?」
「……3日くらい」
「3日か」
ゼウスちゃんはアンドーの言った言葉をもう一度反芻するように呟くと明後日の方を見つめる。
何考えてんだと俺が横顔を見つめるとゼウスちゃんが口を動かした。
「ガイア、なぜ帰蝶は禁術で認識の阻害を受けたというのにあそこに来たのだ?」
「そ、それはきっと妨害とか行かせないように龍に近寄らせないようにするためのこ、工作ですよ」
少し含みのあったゼウスちゃんの言葉に俺はうまく動揺を隠して、返事を返す。
疑いをもたれているだけで、奴に禁術がかけられなかったことはバレてないはずだ。
「本当にそれだけか?」
「な、なにが言いたいんです、ぜ、ゼウスさん。ぼ、僕のことを疑っているというんですか? ハァハァ……ぼ、僕は全くの潔白ですよ」
「おい、コイツ。めちゃくちゃあやしいぞ」
動揺で乱れる呼吸を悟られぬように言うと、アンドーが余計なことを口走った。
「どこが怪しいていうんですか! 着ぐるみ着て、イントネーションのいかれてるわけのわからない名前を名乗っているあなたの方が怪しいですよ! ゼウスさん、真に疑うべきは僕ではありません、目の前の青ダヌキヤローです!」
「お前、適当なこと言って、矛先を俺にむけてんじゃねえ!」
「お前ら、言い争いはやめろ。私は怒らない。素直に話せ」
「え、ほんとですか? いや、実はクリムゾンにだけ禁術かけるの失敗してたんですよ、フフフ」
「何笑ってんだよ(激怒)」
ボゴォ!
いや怒らないていったじゃん……。