8話 聞えるぞ、貴様の心臓の音が!
俺はブラックホールに手を掴んで、アーティファクトをあさっていると重大な事に気が付いた。
どれが魅了系のアーティファクトが分からない。
「すいません、青ダヌキさん。この中で魅了系のものは?」
「……」
こちらが尋ねたがタヌキはずんぐりむっくりしたままの顔を寸分を動かさず、こちらの言葉を無視した。
マジか、コイツ、ほぼ初対面の相手にシカト……!?
「あの魅了系のもの……」
「……」
もう一度問いかけるが、鋼の無表情でやはりこちらの問いかけに答えない。
流石になんかおかしいなと思った俺は揺さぶってみる。
だが反応はない。
これはやはり
「し、死んでる……!?」
「なんだと!?」
俺の言葉を聞いたゼウスちゃんが奴へのホールドを解除して飛び退く。
すると奴の身体が大きく揺れ、背中が見えた。
俺はそこに生物には着いてはいけないものが、着いているのを確認した。
「じ、ジッパー……」
「こ、これは!!」
俺がジッパーを確認してから、ゼウスちゃんが奴の抜け殻をひっくり返すと、床に穴が開いているのが見えた。
「逃げられたようだな……」
「いや、ブラックホールがここにあるということは奴はまだここに居ます」
俺は奴がいることを確認するために、床に耳を着ける。
ドクン、ドクン!
すると奴の心臓の音が聞こえてきた。
「やはり、奴の心臓の音が聞こえます。奴はまだ船内に居ますね」
「よく聞えるなそんな音……」
―|―|―
「近い! 近いですよぉ、ゼウスさん! こんなに脈打って!」
俺は床に耳を着けて報告すると、ゼウスちゃんがやべえ奴を見る目で見てきた。
「ゼウスさん、我々は目的を果たす為にはなりふりを構っている余裕などないんです。早く奴を捕まえて、我々はモテモテにならないといけないです」
「ガイア、お前、目的と欲望がすり替わってるぞ……」
ゼウスちゃんは何やら不満そうだが、そんなことよりも青ダヌキの方が優先だ。
早く奴を捕まえねば。
「ここですね。隠れてても僕にはわかりますよ」
一番大きく心臓の音が聞こえた客室の中に入り、クローゼットの中を開ける。
すると中から黒髪の全身青タイツ女が姿を現した。
コイツが青ダヌキの本体だろう。
「もう逃げ場は在りませんよ、青ダヌキさん。一緒に来て、アーティファクトの採掘を手伝ってもらいましょう」
「お前みたいな、人のことをタヌキ呼ばわりする奴に協力するわけないだろう! この安藤浅葱! 絶対にお前には協力せん!」
「アンドゥアサギ……?」
慣れない言葉をいきなり言われ、俺が戸惑っていると奴は顔を真っ赤にし始めた。
「誰がアクション対〇忍じゃ、ボケェ!!」
誰もそんなこと言ってないよ……。




