12話 サイコパス魔王
ターゲットの一部始終を行動を見ることであたしはこの男の真意に気付いた。
ガイア・フォースはこの国の王を殺害し、私たちに濡れ衣を着せるつもりだ。
奴の類まれなる思考誘導により、奴が国王に行った工作のすべてが私たちのせいとなっている。
しかも、隣の壮年の男に言うところによると、ホモ御殿という訳の分からない建物の一件まで我々のせいということにしているようだ。
国王に対する数々の工作、襲撃した私たちを生かしていること、知らぬ一件について私たちのせいだと話が通っていること。
間違いない。
この男は聖国から帰って来てすぐに我々の存在に気付き、利用することに決めたのだ。
なんという強かで狡猾な男だろう。
自分に差し向けられた各国の暗殺者たちを逆手に取り、自分の欲することの為に有効利用するとは。
「早く奴を亡き者にしなければ。さて、次はどうしましょうか。」
ターゲットは余所行きのような白々しい笑顔を張り付けて、そう呟く。
悪魔のような男だ。
これほどまでの鬼畜の如き所業をしておきながら、まるで気負ったところがない。
「まったくですな。テロリストどもを一人残らず抹殺せねば」
壮年の男はガイア・フォースが言った国王を抹殺するという意味合いの言葉を勘違いして素っ頓狂なことを言う。
男は全く疑いを持っていない。
くそ、このままではガイア・フォースに扇動され魔導国、異国、途上国で猛威を振るう民たちを止めることが出来ず、三国は事実上の崩壊に追い込まれる。
ガイア・フォースを暗殺してそれを止めるために派遣されたというのになんということか。
私たちはその逆にガイア・フォースに利用され、イースバルツの王暗殺の濡れ衣を着せられることで奴の大陸統一の動きに貢献させられるなど。
何とかしなければならないというのに身動きが取れないのが歯がゆい。
自分に出来ることはあとの二人に望みを託すだけだ。