5話 俺はまだ本気を出していない
「おおと、熾烈なGP獲得争いが展開される中で、先頭集団が第二トラップゾーン「トラブルモリダクサンリンカイガッコウ」に到達!」
第二トラップゾーン。
気温変動機構によって作り出された凄まじい熱気と、水中という汗の大量流出不可避な環境で破壊可能な水分補給スポットを経由して泳いで進み、先に進むゾーンだ。
泉を改造して作った人工ビーチなので裏技を使えば、水分補給スポットに行く必要などなくなるが、ここまで残ったギルティな輩ならそんなことよりもより早くたどり着いて水分補給スポットを破壊することに注力するだろう。
きっとこのスポットでかなりのギルティが厳選され、先に進めるのはエリートギルティだけに制限されることだろう。
「ふ、どうやら本気を出す時が来たようだね」
「マンティー、我との競い合いで分が悪かったとは言え、出し惜しみをしていたなどと言う言い訳は見苦しいぞ」
先頭集団の最先方にいるマンティー兄妹が水辺の前で一度止まって何やら話している。
アダルマンティーは兄マンティーの言葉を聞くと、ニヒルに笑い、腕につけた金属器を取り外す。
金属器を地面に向けて落とすと、金属器を落とした地面から土埃が立ち上がる。
「この土埃……! ただの金属器ではないな!」
兄マンティーが金属器を持ちあげると
「これは! 屈強な兵士10人分にも見まがうような重さ! これまでこんなものを点けて走ってきたというのか!」
と絶叫。
「お父様、ここで勝たせてもらうよ!」
アダルマンティーはそれだけ言うと泉の中にバタフライする。
「あれは乙種クズ術『オレハマダホンキヲダシテイナイ』ですね。アダルマンティーさんに100万GP付与です」
どうやら奴は正統派クズ術の使い手らしい。
おそらく勝負をかけると言った奴はここで、クズ術奥義「キタネエハナビ」を発動することだろう。
奴のクズ術の余波で数多のギルティが犠牲になることは想像に難くない。