3話 防寒対策のガチムチ
ピンクはスタート10メートル地点で、フルマラソンを終えたばかりの選手並みの荒い息を吐きながらめちゃくちゃ足だけを動かしている。
足の動きの激しさに比べて、カタツムリの一歩くらいしか進んでいない
俺には奴が目の前で繰り出している高等技術が何か分かった。
「あれは選ばれしクズの中のクズのみができるとされる秘技! クズの呼吸、一の型、『ガンバテルフリ』!」
その行動にはなんの正当性もなく、なんの躊躇いもなく、この序盤で高度なクズスキルを披露している。
もはや存在自体がギルティだ。
「あまりにも隔絶しすぎている、奴には一億GPを与えるほかありませんね」
「おおっと、ピンク選手! ロイヤルファミリーの1000倍のポイントを獲得! ビリのまま、トップに急浮上! その所業は、まさに稀代の矛盾メーカーとしか表現できない! 」
やはりピンクをギルティ認定するべきなのだろうかと思案すると、先頭集団からどよめきの声が上がった。
見るとブリザードの中を進んでいく先頭集団の姿が見えた。
どうやら最初のトラップゾーン、『吹雪の山荘』に到着したようだ。
このゾーンでは気温調節機構で起こしたブリザートと無数に設置された落とし穴があり、途中にある掘っ建て小屋で防寒具と一部の落とし穴の場所を確認することで進めるという仕様になっている。
結構エゲツナイ仕様なのでここで人間性とかが浮き彫りになる可能性が高そうだ。
ブリザードのまただ中にいる集団を見ると皆熱気の凄まじいガチムチの周りでキョロ充をして、暖を取りながら進んでいる。
だがガチムチたちだけでは寒さを防げても、落とし穴は防げない。
ガチムチたちで時折暖を取りながら、ホワイトアウト必死のブリザードの中を先陣を切って進んでいく連中が相次いで落とし穴に入っていく。
先陣をきっていた連中はおおよそ行動力にあふれた陽キャ。
ここで後方にいる奴らはギルティ。
本格的なギルティの厳選が始まったようだ。