2話 ロイヤルは伊達じゃない
「始まる前から会場に立ち込める凄まじい熱気。選手たちにとっての戦いはもう始まっているようです」」
第1種目 アイズトライアスロン。
俺のママ考案の畜生トラップが至るところに張り巡らされた、アイズ村の陸海空を横断するとんでもトライアスロンだ。
トライアスロンなど規模の小さい村でやるものではないが、入り組んだコースと空まで使うことで無理やりそれを実現させた。
俺にはコイツを真面目に作ったママが何を考えているの分からない。
パン!
そんなことを考えていると、何かが弾ける音がした。
魔力を圧縮させて割った音――競技開始の合図だ。
農業地区で土煙が舞い上がると思うと、選手たちが走り出していく。
少しすると先頭集団の中から、二人の男女が抜きん出ていく。
「ふ、やるじゃないか、お父様」
「娘に負ける父などいるものか」
アダルマンティーと兄マンティーだ。
どうやら先頭を行くことで、兄妹の爛れた愛を村中に見せつけたいようだ。
これはギルティこの上ない。
ギルティポイント、通称GPを奴らには1000与えておこう。
「先頭の彼らには素晴らしいですね。1000GP与えたいと思います」
ちなみに俺が与えられるGPは無限で、グランプリが終わった後にこいつが一番多いものがスケープゴートに就任する。
「ロイヤルファミリー! 開始早々、他の選手との格の違いを見せつけた! ロイヤルは伊達じゃないというか!」
セールスマンはいきなり起こされた禁忌に興奮したようで、謎のハイテンションを披露する。
俺は他の奴らで畜生行為をしている奴がいないか確認していくと、ピンクがビリに居ることが分かった。
奴なら周りの選手を轢くような勢いで走るかと思ったが意外だ。
ピンクをしばらく見ているととんでもない行為をしていることに俺は気づいた。
「あ、あれは!?」