1話 一番悪い奴は誰だ! サタングランプリ開催!
俺は成り行きで、半壊してしまったヘルメス家の客間から外に出ると、スケープゴートを探し始めた。
だが途中で無実の人間をギルティにしたて上げるのはさすがにアレな気がし始め、中断して木陰に腰を下ろしていた。
無実な人間をギルティにするのは罪悪感半端ないし、俺が断罪されるのも嫌だしなどうしたものか。
木陰からボーと町の様子を見ていると、クリムゾンがなにやら買い物をしている姿が目に入った。
すると頭の中に名案が浮かんだ。
無実な人間がダメならギルティな人間をスケープゴートにすればいいのだ。
罪悪感も無く、しかもこの世から一つの悪が断罪される。
まったくもってグッドアイデアだ。
早速ギルティそのものの人間たちを集めて、厳選することにするか。
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「まもなく血肉踊るガイア次期公爵主催、サタングランプリの火ぶたが落とされる!
ガイア氏によって選ばれた選りすぐりの参加者たちのボルテージは最高潮! 一体だれが栄光を手にするのか!」
セールスマンが拡声の魔道具で大音声をかき鳴らすと周囲からどよめきが起こる。
とんでもないことになったなあ。
と思いながら俺は奴の横でジュースをチューチュー吸ていた。
まさか報連相に基づいて、「選りすぐりのものを選んで、催しをやらせていただきます」と兄マンティーに報告すると「なるほど、イベントを餌にして、テロリストをあぶり出すつもりか! 全面的に協力してやろう!」とか言って、ぶん投げていたらいつの間にか、こうなっていた。
まあ規模が大きくなっただけで別に問題もないか。
「ガイア氏は最も優れたものには相応の報いを与えるとのこと! 稀代の天才が与える褒賞! 一体何が与えるられるというのか!」
与えるのはホモ御殿全焼断罪イベントなのに、キチガイはまるで褒美を与えるような口調で参加者を煽っていく。
なんて悪い奴なんだろうか。
流石に罪深い奴らでもそんなふうに騙すことを言うのはいかんだろう。
俺が訂正を入れておく。
「与えるものは参加者の人生を大きく変えるものです」
そういうとなぜか会場の参加者と観客たちは一層の盛り上がりを見せた。
どうやらこいつら全員破滅願望のあるドエムらしい。