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9.ロベリタ・リ・ベルマーニ

「夢じゃないよ。不安なら、つねって確かめてみたら?」

「え……」


 言われるがままにつねってみる。すると、頬に鈍痛が走った。痛い。痛いということは、夢ではないということだ。私の中に、どうして、がまた生まれる。


「君と、彼女が望んだことだからねえ。魔法の国の大魔法使いとしては、ちゃんと果たしてあげなきゃと思って」

「魔法の国?」

「ここが武具の国なら、隣は魔法の国。本物のロベリタ嬢には魔法の国のスラムで拾われたんだ。ああ、詳細は聞かないでね。いろいろとややこしいから」

「情報屋の部屋は不可侵、って、どうしてですか」

「正確には、この空間だけ魔法の国だから。色んなとこと繋がってる空間なんだよ、ここは」

「……」

「君の世界は魔力が少なかったから、干渉するのに苦労したけどね。いや、転生も上手くいったようで良かったよ」


 セシルと名乗った男が扇を取り出し、笑う。その姿に、私は疑問を抱いた。転生した。私が、ロベリタという人に。じゃあ――


「本物のロベリタさんは、どうしたんですか」

「死んだよ」

「もとの世界の私は?」

「死んだよ」


 あっさりと。死という言葉に片づけられる、二人の女の結末。

 涙が出そうになった。自分が死んだこともそうだが、ロベリタという女性に対して。ハーバードからの寵愛、護衛役の存在、優しい二人に囲まれて、何故――。


「それが彼女の望みだったのさ。君はまだ、この世界の本質を知らないからね、無理もない」

「本質?」

「君の名前はロベリア・リ・ベルマーニ。武具の国の貴族の娘だ。まずはそこから僕が説明して、君は理解しなければならない」

「周りの人は、知ってるんですか? ロベリタさんが死んだこと」

「知らないよ。毒をうけて一命をとりとめたと思ってる。君が何も知らないのも、記憶喪失か何かだと思ってるはずさ」

「ロベリタさんは、それで良いんですか」

「それが彼女の望みだからねえ」


 のんびりとした口調で返される。


「じゃあ、毒っていうのは……」

「彼女が望んだことだよ」


 まさか。ロベリタは、自ら望んで毒を飲んだというのだろうか。

 アランの言葉が蘇る。主人より先に箸をつけるなと怒鳴られた――。

 それは、自分が先に毒を口にするため?


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