59.皇子の回復
「ハーバード様が回復なされたそうよ。貴方に伝えておかねばと思って参りましたの」
クリスの用事は、予想していたよりも意外なものだった。
また何かと世話を焼きに来たんじゃないだろうか、とか、先日の刺客の件を聞きに来たんじゃないか、とか、様々な憶測をしていたのだけれど、予想よりも良い知らせであったことに安堵した。
「そうなの? わざわざ来てくれなくても、アランがいたのに」
確かアランは、王族や貴族の情報を共通できる機械らしきものを持っていたはずだ。
貴族であるクリスが直々に来るなんて、更に意外だった。
「あら。情報は伝わっているはずですわ。いつまで経っても貴方が来ないので、心配して来たのですよ」
「え、そうなの? ……アラン?」
不信感と共に彼を見る。アランは私の視線から逃れるように顔を逸らし、黙りこくってしまった。明らかに何かを知っている顔だ。
「……正直に言ってちょうだい」
「だって、回復したって知らせたら……お姉ちゃん、歩いてでも行きそうなんだもん」
そのしぐさは子供らしく、頬を膨らませている。やはり、彼は情報を得ていたようだ。
呆れと共に溜息を吐く。クリスの方も、何やら驚いた様子で私達を見ている。貴族と護衛役。その関係は、私が思っているよりも、はるかに事務的で、淡白なのかもしれない。




