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42.婚約者代理

「ごめんなさい。ありがとう、クリス。助かったわ」

「これくらい、なんてことありませんわ。ところで、婚約者代理って、誰ですの? ハーバード様はまだ、病に臥せっておられるのでしょう?」

「そうよ。もう少しで回復すると思うけど……この屋敷の者よ。魔法の国の人なの。」

「それは、女王様繋がりですの?」

「え? いえ、違うわ。私の個人的な知り合いよ」


女王様。ハーバードのお母さんにあたる方だ。確かに、魔法の国の人間と言ったら、クリスの立場だったらそちらを想像するだろう。

否定されたことが意外だったのか、彼女は怪訝そうに目を細めて私を見ている。婚約者を差し置いて男と遊んでいるのでは、と疑っているのだろう。私は慌てて弁解した。


「あ、いえ、違うの、身分は保証するわ。古い友人だから」

「わたくしよりも?」

「え? えー……それはどう、かな、たぶん? それらしいかな? だって私、記憶ないんだもの」

「騙されているのではないでしょうね」

「そ、そんなことはないわ! ハーバードも知っている人よ。身分はちゃんと保証できるわ」


多分、と小声で付け足した。思わず視線を逸らしてしまったのは、セシルの胡散臭い笑顔を思い出したからだ。

クリスはなおも怪訝に思っていたようだが、詮索しても仕方がないと判断したのか、まあ良いですわ、と話を切った。

内心安堵する。探られて痛い腹がないとは限らない。しかし、その心配は友人としてのものなのか、それとも私の背後にいるハーバードを見据えての事なのか。真意は分からなかったが、彼女が私の為にしてくれたことを思い出して、なんだか嬉しくなった。


「ありがとう、クリス。心配してくれて」

「ち、違いますわ! わたくしが心配しているのは病に臥せっているハーバード様のことです、誰が貴方の事なんか」

「でも、ドレス、用意してくれたわ」

「それもハーバード様の為と、記憶がない貴方が恥をかかないように、です。護衛役にも頼まれましたから。下々の頼みは聞くのが貴族としての役目ですわ」


クリスが再び、静かに手を挙げる。するとドレスを持った使用人たちが、私の選んだドレスのみをクローゼットの中へとしまい、部屋を出ていく。クリスもそれに続くように席を立った。


「このドレス、差し上げますわ。では。当日はハーバード様の威厳を損ねぬよう、しっかりと務めるのですよ。ロベリタ」


そう言い残し、彼女は去っていった。

最後までハーバードのことが根底にはあったが、あれが彼女なりの愛情の示し方なのだろう。クローゼットにしまわれたドレスを眺め、私は金色の髪飾りを見繕った。




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