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41.蒼

「では、こちらをお貸しします。髪型はハーフアップでよろしいですわね?」

「ええと……記憶喪失になる前は、そうだったの?」

「まさか。髪を結ぶという概念さえありませんでしたわ」

「……今回は婚約者代理の方もいらっしゃるから、それなりにきちんとするわ」


 ロベリタは、貴族としての心得はあれど、髪型やオシャレには無頓着だったらしい。確かに、クローゼットの中身を見ても、クリスが身にまとっているドレスよりもシンプルなものが多い。彼女が恥のないようにとドレスを持参した来たのは、そこに理由があるのだろう。


「良いです? 髪留めはドレスの色に合わせて、金のものにしなさいな。その方が品も出ますし、ワンポイントにもなって丁度良いですわ」

「なるほど」

「胸飾りは……青ですから、蒼いバラが良いですわね。屋敷に自生していたでしょう、そこから選びなさい」

「え……蒼いバラ? そんなもの、自然界にあるの?」


 蒼い薔薇。私はその言葉を聞いて驚いた。蒼い薔薇が自生するだなんて思ってもみなかったのだ。


「何を言っていますの? 常識でしょう。赤の方が珍しいくらいですわ」


 異世界だから、なのだろうか。こちらでは、赤よりも蒼い薔薇の方が主流らしい。確かに美しいが、遺伝子組み換えでしか存在しないと思っていたので、意外だった。流石異世界というべきか、私の世界と似ているようで、少し違う。


「わかったわ。金の髪留めと、蒼い薔薇ね。クリスは何を着ていくの?」

「貴方が蒼ならわたくしは赤にいたします。あまり被っていても仕方ありませんもの。ああでも、流行というものがありますから、胸飾りは薔薇にしますわ」

「おそろい?」

「自覚がないようですけれど、わたくし達は上流階級の人間ですのよ。わたくし達の行動、ファッションが流行となるのです。おそろいなどとバカげたことを言っていないで、貴族としての自覚をなさい」


 ガールズトークの様で少し嬉しかったのだが、ぴしゃりと叱られてしまった。

 セシルに聞いたことだが、クリスは私の次にえらい身分らしい。近い身分だからこそ中も良かったのだろう、と言っていた。私がいなければ、彼女がハーバードの婚約者になっていたであろうことも。


(ロベリタは、どうして私をこの世界に転生させたのかしら)


 疑問が募る。彼女にハーバードを譲りたいなら、そのまま毒で死んでいればそれは叶った筈だった。それなのに、どうして。考えても答えが出ないとわかっていながらも、考えてしまう。クリスにぼうっとするなとまた叱られるまで、私はその事に思いを馳せていた。


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