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40.クリスとの再会

 翌日。クリスが駆けつけてくるまで、私は貴族としての教養を詰め込まれた。社交界での礼儀や言葉だけでなく、今の政界の情勢、反ハーバード一派が誰を推しているのか、毒の出所として有力な場所――それらは全て私の知りたいことであったが、一気に詰め込まれると辟易する内容でもあった。

 反ハーバード一派は、ハーバードの弟、次男であるバリルという人に皇位を継がせたいらしい。バリルはハーバードと比べて学があり、武術は少々劣るものの、帝王学は頭に叩き込んであるという噂だ。

 そしてそれを推しているのが――ハーバードの、お母さんかもしれないということ。親殺しの儀を止めたい人物で、毒について見識のあるのは、セシルと同じ魔法の国出身であるハーバードのお母さんが一番可能性が高いということだった。


(実の親に命を狙われるなんて……)


 最初こそそう思った私だったが、ロベリタやアラン自身が親を殺しているという事実を目の前にした時、そんな当たり前の常識はどこかへ吹き飛びそうになった。此処は武具の国。武具で常識を押し通す場所。親でも子供でも関係ない。そこにあるのは、ただ生きたいという願いと、生きてほしいという懇願。それだけなのかもしれない。


「全く、ドレスも選べないなんて、記憶喪失っていうのは不便ですのね」


 やってきたクリスは、何着かのドレスを使用人に持たせていた。

 呆れ顔で溜息を吐きながら、何人かの使用人にそれを並べさせる。


「舞踏会に今から出ようなどと……仕方ありませんから、わたくしのドレスで着ていないものをお持ちしましたわ。さ、この中から選びなさいな」

「選べって言われても……何もわからないんだもの、何を基準に選べば良いのか……」


 そう。彼女が持ってきたドレスは、多すぎて何が何だかわからなかった。私が困惑していると、彼女はまた盛大に溜息を吐いて、ブロンドの髪を掻き上げる。仕方ありませんわね。諦めとも呆れともつかぬ呟きがさらりと零れた。


「貴方の髪色と目の色なら、青が似合うんでなくて? 瞳の色に合わせるのが一番ですわ」

「瞳の色?」

「わからない場合のことです。次回も青を選んでいては笑い者になるので気を付けるように。……こちらへ」


 クリスが手を挙げると、青いドレスを持った使用人が数人、前へ出てくる。

 ネイビーカラーに白い、紋様のような装飾をあしらえたドレス、ノースリーブのシンプルな青いドレス、襟が大きなフリルになっており、胸元が開いているドレス――どれも高級そうな一品だったが、私は一番最初の、ネービーカラーのドレスを選ぶことにした。

 ノースリーブも胸元開きも、なんだか気後れしてしまったのだ。当のクリスは、それで良いんですの、なんて意外そうに聞いていたが、私は頷いた。この際何でもいい。クリスならば、社交界の舞踏会でも恥のないドレスを選んできているだろう。



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