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33.社交界

 用意してもらったお茶を飲み干すと、セシルは少しずつ、私を取り巻く環境について話してくれた。まずはどこまで知っていて、どこまで知らないのか。私が武家の娘だということ。ハーバードの婚姻は次の王の即位に関わること。ロベリタは本当は親殺しの儀が免除されるはずだったこと、私が狙われていること――私はアランやハーバードに聞いたことを全て話し、伝えた。


「そこまで知ってるなら話は早い。……僕が持ってる情報では、一個だけ確信とまでいけないものがあってね。手に入れられないものがあるんだ」

「手に入れないもの? 情報、ですか?」

「そ。だから僕と、社交界に行かないかい?」

「しゃ、社交界!?」


 それは突拍子のない申し出だった。けれど、言われてみれば、こちらに来てからというもの、貴族らしいことと言えばクリスと話をしたことぐらいしかなかった気がする。

 いつまでもハーバードに任せるわけにはいかないだろうし、これは受けておくべきなのかもしれない。しかし、真意が見えない。いつも傍には内情に詳しいアランがいたので、自分で物事を捉え、考えるのは久しぶりな気がする。


(社交界……も、学んでおくべきよね)


 前に職場の懇親会に出席したことがあるが、あれと似たようなものだろうか。いや、目的やプロセスは同じでも、雰囲気やルールは全く違うだろう。思わず尻込みしてしまう。迷っている私に気づいたのか、セシルが助言をするようにこう続けた。


「社交界とはいっても、形式だけのものだよ。ルールは一通り教えてあげるからさ。気楽な気持ちで出てみない?」

「気楽な気持ちで……ですか」

「君がいないと、僕も出れないんだよね。ハーバード皇子の代理としてしか潜り込めないだろうから。僕の身分は君が保証してくれればいい」

「保証って、どうやって……」

「なに、君は王族の次にえらい身分なんだ。君が身分を保証すると言えば、誰も深くは聞いてこないさ」


 ばさ、と扇が開かれる。まただ。また、この人の表情が見えなくなってしまった。

 少し残念な気持ちを抱きながら、私は言われるがままに頷く。今は、頷くしかなかった。


「じゃあよろしくね。婚約者代理として、僕も頑張るよ」

「婚約者代理!?」

「言っておくけど、時期的に見ても、そろそろ君も社交界に出なきゃいけない頃合いだよ。皆が皆王都に住んでいるわけじゃない。姿が見えなければ、本当は毒で死んだんじゃないかと疑うものが出てくる」


 もっともだった。ロベリタの身体がどれだけ眠っていたのかもわからない。数日、数か月単位で眠っていたとして、私と意識が変わってからもハーバードが代わりに貴族らしいことをしていたんだとしたら。姿が見えないことで不信感が生まれるのも、頷ける。

 人は集まると、あらぬ噂でも信じてしまうものだ。OLをしていた頃を思い出す。私もよく陰口を叩かれていた。私だけでなく、出世した同僚や、先輩も。幹部と寝たとか、もうすぐ結婚するとか。噂というのは、意外と根のないところに立つものなのだ。


 ロベリタは羨望の眼差しで見られることが多いだろう。ならば余計に、嫉妬も集めやすいのだろう。情報屋はそれを見越して言っている。流石に社交界のルールは、護衛役のアランでもよく知らないと予測して。


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