27.襲撃
「ご苦労様。顔が見れて良かったわ。」
「それは何よりです。道中お気をつけて」
私達は、再び屋敷へと戻ろうとしていた。豪華な馬車に乗るまで、メイド長は再び手にした蝋燭の灯りで足元を照らし、見送りをしてくれた。
アランと二人、ふかふかのソファの誂えられた馬車に揺られる。時折馬の吐息が聞こえ、この世界は車というものがないのだなとしみじみ感じた。
アランが持っていた小さな機械は、なんだったのだろう。機械に見えただけで、実は魔法で動いているとか、そんな感じなのかもしれない。私はまだ、この世界のことを全く知らない。毒の事と一緒に、セシルに聞いてみようと思った。
そんな、穏やかなひと時、けれど確かに胸がざわついていた時だった。
「!?」
馬の雄叫びと共に、ぐらりと馬車が揺れ、動いていた景色が止まる。
アランがナイフを取り出すのが、視界の端で分かった。私もアランに倣い、腰のナイフに手をかける。もっとも、持ったとして、使えるかどうかはわからないのだけれど。
「……何事ですか。説明なさい」
ロベリタだったらこう言うだろう。使用人に声をかけたが、返答はない。代わりに、馬車の扉が乱暴に壊された。
「お姉ちゃん、伏せて!」
叫んだアランの声に、反射的に倣う。前にもこういうことがあったのだろうか。やけに体の反応が機敏だ。
伏せた頭上を、アランのククリナイフが駆けて行くのを感じた。髪に生ぬるい液体がかかる。それが血だとわかったのは、静寂が更に濃くなり、そろりと顔を上げた時だった。
足元に転がっていたのは、首のない死体。首は脇に転がっており、胴の切断された断面からは噴水のように血飛沫が上がっている。それは地面に溜まり、水たまりのように広がって、荷馬車の車輪を赤く染める。




