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26.知らない顔

「俺はお前の為に人を殺す。それがどういうことか、まだわかってないんだな」

「え……?」

「俺の罪はお前の罪だ。婚約者ってのはそういうものだろう。なあ、ロベリタ」


 ハーバードの顔が近づいてくる。


「ハーバード……?」

「俺はお前が別人のようになったってかまわない。昔のように毅然としていてもかまわない。何もかも受け入れる。……お前が俺から離れようとしない限り」


 また、キスをされてしまう。そう思って目を瞑った時、ひやりとした刃の感覚が、私とハーバードを隔てた。


「そこまで。……ハーバード、あんたは病人だろう? お姉ちゃんを襲ってる暇なんかないよね」

「てめえ……!」


 アランだった。赤い髪の隙間から、紅玉の様な瞳が覗いている。アランがハーバードの背後から、その喉元にククリナイフを突きつけていた。

 ハーバードには悪いが、助かった、と思った。人が変わったようにキスをされるのはこれが初めてではない。今度は未然に防がれたかと思うと、安堵せざるを得なかった。


「アラン……ありがとう」

「言ったよね。キスはしないでねって。僕、妬いちゃって殺しちゃうかもしれないからさ」


 低いトーン。一言聞いただけで、彼が非常に怒っているのが手に取る様にわかった。

 ハーバードは喉元に刃物を突きつけられながらも、肩越しにアランを睨みつけている。今にも殺し合いが始まりそうだと思った時、宵闇の向こうで人の気配がした。


「騒がしいですよ。ハーバード様、お休みになられているのではないのですか?」


 先程のメイド長の声だ。


「……邪魔をするな。私は今取り込み中だ」

「申し訳ございません。ですが、お身体に障るのではないかと思いまして」

「そうだよ、ハーバード。……親殺しの儀、また伸ばしたいの?」


 アランがからかうように言う。いつもと違う空気を纏っていたハーバードだったが、親殺しの儀のことが話題に上がった瞬間、あきらめたように目を伏せた。そうして盛大に溜息を吐いて見せる。


「……今日はもう帰れ。毒が抜けきっていない」

「ごめんなさい、ハーバード。また来るわ」

「貴族がそう簡単に謝るなと言っただろう」


 彼は苦笑する。私は思わず、自由になった手を口に当てた。

 貴族というものは、なかなか慣れないものだ。心の底からそう思う。

 ロベリタでなくて、ごめんなさい。私はもう一度、心の中で、彼に謝った。


「行きましょう、アラン」

「御意。ロベリタ様の御心のままに。……なんてね」


 くすくすとアランが笑う。すぐに突きつけていたナイフをしまい、私の傍へ駆け寄ってくる。油断していたのか、その際に音がしたので、「お静かに!」とメイド長にまた怒られてしまった。

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