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22.貴族として

 ハーバードの部屋は、如何にも、王子様らしく最奥部に位置していた。

 メイド長らしき人が持つ蝋燭の明かりだけが、部屋を照らしている。柱に施された彫刻、歩けば音の出る大理石の床。一部分に敷かれた分厚い絨毯。見たこともない花の差された、華美な花瓶。照らされた一部分だけでも、部屋が広く、豪華だとわかる。


「失礼いたします」


 厳かな声で女性が告げた。私は暗がりの中にハーバードの姿を探す。視線を巡らせると、宵闇の向こうに、大きな天蓋付きのベッドを見つけた。


「ハーバード!」

「お静かに!」

「ご、ごめんなさい」


 ぴしゃりと叱られる。ただでさえヒールの靴を履いてきてしまって、足音を立ててしまっているというのに、これでは彼を起こしてしまう。

 アランはというと、もともと隠密行動に長けているのか、一緒に歩いているのに足音一つしなかった。風の一族の異名は伊達ではないらしい。悔しさと、羨ましさが募る。


「つまさきを立てるように歩くと良いよ」

「ヒールなんだから、もう立ってるわよ……」

「ロベリタ様は足音一つしなかったけどな」


 くすくすと小声でいじられる。現代日本のOLには荷が重い。昔、学生だった頃、貴族になりたいとか言ってごめんなさい。今は亡きロベリタに、私は懺悔した。

 しかしヒールの音も、ベッド周りの絨毯に差し掛かれば、気にならなくなった。大きな部屋だが、主人を起こさないよう、よくできている。この国の王への忠誠心と配慮に感謝しながら、私達は眠っているハーバードに駆け寄った。


「こちらをどうぞ。では、わたくしは外で控えておりますので」


 火の灯った蝋燭を渡される。ありがとう、と言いかけて、私は口をつぐんだ。


「ご苦労様」


 代わりに、ねぎらいの言葉を贈っておく。ロベリタらしくあれただろうか。アランを見ると、微笑ましそうに目を細めて私を見ていた。全てを知られているというのは、安心はするが、なんだか居心地が悪い。


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