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17.クリス

「ごめんなさい、遅くなってしまっ――」

「遅かったですわね、ロべリタ」


 ごめんなさいの言葉と共に扉を開けると、まず目についたのは美しいブロンドの髪だった。瞳は青、しかしその眉はきつく吊り上がっており、その唇はきっ、と固く結ばれていた。怒っている、のだろうか。それはそうかもしれない。外見はロベリタでも、中身は私。慣れないドレスに戸惑ったのが本当のところだった。


「ドレスの着方も忘れてしまったんですの? ああ、もう、髪型もこんなに変わって……本当に別人の様ですわね」


 シックなドレスだったので、髪を一つに結い上げたのだが、現代日本のOLの小手先では本物にはかなわなかったらしい。すぐにきつく結んでいた髪紐をほどかれ、慣れた手つきでハーフアップにされる。これがいつものロベリタの髪型なのだろうか。そう思って聞いてみると、目の前の女性の眉がまたピクリと動いた。


「髪なんて、縛ってる方が珍しかったわ。本当に何も覚えていないんですのね。嗚呼、嘆かわしい。大体、毒なんて貴族が一番気を付けるべきものでしょう。あなたらしくもない。」

「……ごめんなさい」


 毒を飲んだのは私ではないが、一応謝っておこう。

 何故だろう。なんだか先程から流れに圧されている気がする。


「まあ、いいわ。こうして生きていたのだし。……護衛役、貴方も出てきなさい。別人過ぎてこちらの気が抜けますわ」

「あれ? 気づいてたんだ」


 天井の壁を外して、ひょっこりとアランが顔を出す。そんなところにいたのか。いや、いつもいるのかもしれない。いつだって、彼は傍で私のことを守っている風だった。


「気づくも何も、護衛役とはそういうものでしょう。わたくしの方も控えさせていますし、何もおかしいことではないわ。そう、傍にそう従えていた方が、ロベリタ・リ・ベルマーニらしくて良くってよ。まずは護衛ありきでもよろしいから、きちんと貴族として務めを果たしなさいな」


 えらく高圧的な物言いだ。物怖じしていると、こっそりとアランが囁いてくる。



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