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10.殺し合い

「ハーバード! あんたに彼女は渡さない!」

「こっちのセリフだ、クソガキめ!」


 扉を開けると、そこは戦場だった。

 廊下を歩いているときから、何か騒がしいな、とは思ったものの、まさか大人しく待っているはずの二人が殺し合いをしているとは思わなかったので、私はしばらく呆けていた。

 アランの二本のククリナイフが、ひゅんひゅんと宙を舞っている。その矛先が狙うのは、一つ――相手であるハーバードの、首のみのようだった。

 彼はそれを上手くかわし、剣で応戦している。しかし体のあちこちが傷だらけだ。アランと比べて、戦闘経験が乏しいのか、それともアランが経験しすぎているだけなのか。皇子と呼ばれるその響きにしては、その動きはまだ泥臭く見えた。

 対してアランの方はというと、時折ハーバードに赤い花を咲かせながらくるくると踊っているようだった。あれでは、多少戦闘経験があっても太刀打ちは難しいだろう。私の身体に眠る本能がそう告げている。


「……あの、これは一体……」


 二人が同時にこちらを見る、瞬間、アランの手とククリナイフを繋ぐ紐が、ハーバードの剣にくるくると巻き付いた。二人の動きが止まったかと思うと、ハーバードは悔しそうに歯ぎしりをし、対してアランは嬉しそうにこちらへ駆け寄ってきた。それはもう、両腕の赤く染まったククリナイフと共に。ついでにハーバードの剣を引きずりながら。


「おねーちゃん、お帰り!」

「お帰り、じゃないのよ。どうして二人が戦ってるの……?」


 唖然としながら問いかけると、アランが含み笑いをしながら私に近づいてきた。


「……情報屋の領域は不可侵。でも、盗み聞きしないとは言ってないよ」

「!!」

「大丈夫、黙っててあげるから。姫様の方にはあまり興味ないんだ、俺」


 そしてまた、不穏な言葉を低いトーンで落とす。無邪気な笑みを浮かべている癖に、抜かりのない子だ。盗み聞きされていたなんて。背筋が凍った。確かに、天井裏を伝っていけば、この少年なら不可能ではないだろう。


「おねーちゃんが遅いから、ちょっと喧嘩になっちゃった。お姉ちゃんのせいだからね?」


 そして何事もなかったかのように、両手にククリナイフを以ってぷりぷりと怒ってくる。

 ぷりぷり、という擬音が似合う状況ではなかった上に、アラン自身にも返り血が付いているが、まあ良いだろう。なんだか慣れてきてしまっている自分がいた。


「というか、セシルがそう呼んでいたけど、ハーバードって皇子様なのよね? それを襲っちゃって良いの……?」

「ハーバードはまだ正式には皇子じゃないからね。親殺しの儀をしてないからさ」


 親殺しの儀。また聞きなれない単語が出てきた。しかも今度は物騒な響きだ。


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