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幕間 アランとセシル

 彼女を送り出して、僕は天井裏の気配へと呼びかけた。


「盗み聞きは良くないなあ。痺れを切らした猫さん」

「流石、魔法の国の手練れだね。そう簡単には気配を消せないか」


 がこん、と板の外れる音がして、天井裏から一人の少年が逆さまになってぶら下がってくる。

 白に近い銀髪に、赤い瞳。所謂アルビノと呼ばれる人種だ。影で生きる役目を果たし、生涯を終えることが多いと聞いている。


「……驚いたな。あのロベリタ嬢が死んでたなんて」


 盗み聞きが好きな猫は、くすくすと無邪気に笑う。

 幻滅したかい、とのんびり聞くと、いいえ、と否定の返事が返ってきた。

 護衛役と聞いている彼の人柄とは予想外の返答であった。


「益々好きになったよ。そして理由が出来た」

「へえ。理由、ねえ」

「あの皇子に楯突く理由としてはもってこいの話だ」


 にい、と楽しそうに口元を歪ませるその形相は、ただの少年のものではなかった。

 もっと別の‘何か’。そこまで彼女に執着している理由を、僕は知らない。情報屋であるくせに、彼女がこの世界で目覚めてからの情報はまだ入ってきていないのだ。


「いいのかい、彼女はもう戻ったよ。傍にいてあげなくちゃ」

「言われなくても。……それに、先にやることがある」

「まさか、ハーバード皇子に楯突くつもりかい?」

「皇子だろうが何だろうが、僕は僕の欲しいものを諦めたりしない。ロベリタ嬢とはその点では意気投合できたかもね」

「流石は闇に生きる者の頭領。傲慢さが違うね」

「お互い様だろ。……前のロベリタ嬢に惚れてたくせに」


 目を見開いた。一族の頭領、というのは伊達ではないらしい。

 自然と笑みが零れる。笑顔と笑顔の駆け引き。これはまだ、明かす筈の情報ではなかったはずなのに。

 鋭い観察眼と言うものは、困ったものだ。どれだけ段取りをしていても簡単に突き崩される。笑みも、感情も、仮面も、情報も――全て彼女の為に用意していたというのに。


「ま、僕はもう行くよ。彼女が帰ってくる前に事を起こしときたいんだ」

「積極的だねえ」

「目の前でキスされたら、焦りもするさ。あんたもそうだろう、情報屋」


 またね、という声と共に、ぶら下がっていたスカーフがひらりと翻る。かすかな物音が遠ざかる。消えた気配。静寂に包まれた部屋の中で、僕は一人、ほくそ笑んだ。


「……キス、ねえ。本当にお子様だなあ」


 僕はそれぐらいで、揺らいだりしないのに。ねえ?


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