表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/67

今時異世界転生なんて流行らない

 二十代後半に差し掛かってから、Mサイズの服が入らなくなった。食べても太らないことが自慢だった私だったが、加齢はあっという間に脂肪を蓄え、見るに難い体型へと変貌していったのである。

 その日も私は、それを理由に彼氏に振られたばかりだった。二十代後半。友達はほとんど結婚して、やけ酒を煽るのも一人でする始末だ。更けていく夜を感じながら、私の意識はアルコールの中へと沈んでいった。


「今時、異世界転生とか流行らねーっての」


 古ぼけたスマートフォンで小説投稿サイトをあさる。逆ハーレムものが私のマイブームだったが、画面の向こうの、誰かが描いた世界の人々はアルコールにおぼれる私を助けてはくれない。本当にあるなら体験してみたいものだ。半ば八つ当たりのような気持ちではき捨て、意識が落ちていくのを感じていた。


 微睡み。ふわふわとした意識の中で、昔のことを思い出す。MサイズどころかSサイズまで着こなしていた時代。淡く消えた青春の日々。告白されるのは日常茶飯事とまでは行かなかったが、それらしいことは何度もあった。化粧さえしていれば、私はどこでだってヒロインになれた。女の子は誰だってお姫様で、そうでない人は努力が足りないだけだと蔑んでいた。食べたら太る、食べなければやせるが後々更に太る。そんな当たり前のことが私の人生には含まれていなかったのだ。


(もう一回、人生やり直せたらなあ。)


 そうしたら、太らないように食べる量も制限するし、美容にももっと気を使うのに。


 それは願いにも似ていたし、祈りでもあったのだと思う。身勝手で、浅はかな私の、最後の願い。

 そのときの私の生は、多すぎたアルコールのせいか、わけもわからぬまま閉ざされたようだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ