マリアージュの場合 夜会
家に戻ってみると、父母も一緒に夜会に出るようで支度をして待っておりました。
あら!ではわたくしのエスコートはどなたなのかしら?
その前に支度だけは終わらせましょう。
部屋に戻ってみると侍女たちが夜会の用意をしております。
なんですか、そのドレスは!
瞳の色に合わせて白から青紫に変化をするオフショルダーのマーメイドラインのドレス……金の巻き毛に映えるアメジストの花の髪飾り……
やめましょうね!
普通にしましょうね。まだ背中の傷痕も残っている状態なのですから。
婚約は無かった事になっているのですから、婚約解消の騒ぎも断罪もないはずです。
ふう。
少し疲れているようです。この身体に馴れてきたのかしら。
あの娘は『夜会で』と言ったのよ。ということは今夜、何かが
起こるのかしら。
起こらなかったら、この先のこの身体の人生はどうすれば良いのかしらね。
まあ、あとは考えずに生きてみましょう。
そのうち、何も知らない人生を歩けるかもしれないわ。
侍女たちの薦めもあり、わたくしはなんて言うのかしら?首まで覆うハイネックのドレスを着ております。首も背も覆われていますが、両肩、腕は出ています。生地は薄いブルーのサテンで、白いレースで覆われています。
形はごく普通にAラインのドレスです。
可愛らしいのですが、これわたくしに似合ってます?
巻き毛はハーフアップに結い上げレースのりぼんで纏めています……
「お父さま、お母さま!お待たせいたしましたわ」
ようやく支度を終えて馬車に乗り込みます。車の中には従兄がおりました。
あら、では今夜はカールにエスコートをしていただくのね?
「カールがエスコートを引き受けてくれだんだ。宜しく頼むよ」
「ええ、おじさん。マリアージュ、久しぶりだね。すっかり綺麗になってびっくりしたよ」
「急に申し訳ありません、カール兄さま」
カールは母の兄の息子です。留学生でちょうど寮で暇をもてあましていたのだといいます。話を合わせてくださってるのだと思いました。淡い銀髪に空色の瞳……母の国の方によくある色のかたです。いいなぁ……
「よろしく、可愛いお姫さま」
な、なんてことをいうのです……言われなれていない御世辞に真っ赤になっていることでしょう。
話が弾み、楽しい道中でした。
馬車が会場につくと、かーるが先に降りてエスコートをしてくれます。
彼の腕をとり、歩き始めます。わたくしの新しい人生の幕開けです。
父や母と共に、カールの腕に支えられて会場にはいりまさした。
今、ここにいるのは卒業した新成人とその家族です。初めての公式の夜会に出席して、これで成人として扱われ始めるのです。
もう少しで開会の宣言がなされるはず。
あら、向こうのほうからざわざわしてきましたね。
ばたばたとはしたなくも足音をたてて数人の方がいらっしゃいました。何事でしょうか?
「マリアージュ.ログアウト。お前との婚約を解消する!私の愛するローザに嫉妬して苛めていたことは明白である!」
このかたは何を言っておられるのでしょう。
婚約が無かった事になっているディアン王子の愛人に何故嫉妬しなければならないのか、わたくしにはわかりません。
ディアン王子の横にはピンクの髪の女性に、王子の取り巻きのサマエル様、わたくしの友人面していたアリスン様などが並んで此方を睨んでいます。
やっと、次で終わるー