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マリアージュの場合 プロローグ

輪廻からの続編です。


長くはならないと思いますが、お付き合いいただけますと、嬉しいです。


初めてのプロットなし作品になるかも。


 私の記憶はまだ残ったまま、ふよふよと空に浮かんでいる。

 輪廻の輪から外れて生きていけると聞いたけど、別に記憶なんて無くていいのよ。もう、先の分かった苦しいだけの人生なら散々生きてきたのだから。記憶も何も無くていい。まっさらな人生を生きたいだけ。先の分かった人生は要らないわ。



 そう思っていたはずなのに、何故かしらね? この状況は。



 私の目の前には、横たわった一人の女性がいる。

 黄金の髪、紅の口唇、瞳は閉じられているせいで見えないが。

 肌は透き通っているかのように色がない。

 細く長いその指は胸の上で組まれている。

 薄絹で覆われたその身体は、いくつかふくらみを顕している。


 そして、薄ぼんやりとした姿の横たわった女性と瓜二つの影が目の前にたっている。


「この状態はどういうことなのかしら?」


『すまぬ』


「ということは、貴方にはこの状態を説明できるのね」


『力が僅かに足らず、位階渡りがうまくいかなかったのだ。そなたの魂を疲弊させずには、この位階でしばらく待たねばならない』


「そう……」


『この階での魂の入れ物が見つからず、すまないがこの中で待っていてもらえないだろうか』


「この中って……」


『中身はすでに出払っておるのでな。ほれ、そこでおのが身体を見下ろしておるであろう?』


この薄い影が持ち主なの?

これだけ整った顔と身体なら身分の高い家のもののはず。肌にも指先にも傷一つない。

だけど、表情も何もない。



「ねえ、そこのあなた? この身体の持ち主さん?」


《なに?》


あら、返事はできるのね。


「何故貴女はこの身体から離れてしまっているの?」


《疲れたの》


疲れた?


「何に疲れたのかしら」


《いきるのに》


「まだまだ、若いのでしょう?」


《もう、だめなの。なにをしても、むだだもの》


「無駄って……」


《知っているの。あと一月もすれば、断罪されるのよ》


「断罪って…… いったい貴女は何をしてしまったの……」


《何もしていないわ。なるべく当たり障りのないように生きてきたのに。何もしていなくても、周りが勝手に動くのよ。何度止めて欲しいと言っても無駄だったわ。勝手に推し量ったと言って、全てはわたくしのせいになるのよ……》


とうとう、泣いてしまった。だが言葉は途切れ途切れになりながらも、彼女は気持ちを吐き出していく。要約すれば、小説の中に自分が存在しているのだという。

幼い頃からの婚約者から、これから一月後の夜会で婚約破棄を言い渡され罪を暴かれるのだと。自分が求めていない取り巻きがやった事も全ては主のやった事となり、斬首されるのだと。

聞いた事もない話に混乱するが、この娘は知っているのだと。

前世の記憶があり、そこで読んだ小説の中なのだと。



「それで貴女はどうしたいの?」


《もう、転生しなくていい。消滅したいの。もう、こんな生は嫌……》


気持ちは分かる気がする。私も輪廻の輪から外れたかったから。




でも、私に何ができるというのだろう。そして、すごく嫌な予感がするのだけれども。


先程聞いた、この中で待って欲しいと……

まさかね……

そんな気持ちで振り向いて守護者をみあげると。





『そういう訳だ。この娘は消滅して、そなたがこの中で力が満ちるのを待つのだ。魂のままだと消耗が激しいのでな』


「一月後には斬首されるこの身体で待つの? まさかよね?」


『いや、魂のない身体も、入れ物のない魂も消耗は激しいぞ?』


待って待って待って!


『ほら、あちらはすでに消滅への道を歩み始めたぞ』


えっ?

振り返ろうと…… 引っ張られるっ。身体の方に……





気がつくと、違和感のある身体におさまっていました。

腕をあげるにも辛いこの身体に。


気がついて直ぐに気絶なんて……



目の前がくらくなっていきました。






とりあえず、プロローグを。


次回は『マリアージュ』です。

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