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新_ショートストーリー集  作者: ノーリターン新
13/13

涙の海を完泳せよ3

今日学校帰りに歩道の石を蹴った。


彼女はふてくされた顔で屋台のたい焼きを買ってきた。


セーラー服を脱ぎ散らかして、携帯電話を放り投げる。


学校でつまらないことがあったから。


ほんの些細なことで同級生と言い争いになった。


本当につまらない原因。


スウェットスーツに着替えてからベッドに突っ伏す。


ボム


グスグス泣きながら熱いたい焼きを食べる。


あんこが少ないなとか思いながら、彼女は明日の身体測定を気にする。


弟のタイゾウが不登校でひきこもりだから、親がいつも怒っている。


変に優しくして甘やかしてはいけないと言う親。


彼女は知っている。


誰もが寝静まった深夜2時、タイゾウが一人で出かける。


最近毎日だ。


ある日気になって彼を尾行した。


暗い夜道で彼女は何回かコケたが、彼は夜目が良い様だ。


町外れの小高い丘を駆け上ると階段の先に、広い展望台がある。


いきなり現れた彼越しの満天の夜空に、心がときめいてしまった。


「うわあ・・・」


「おねーちゃん!」


タイゾウが驚いて振り向く。


彼は寝巻きのままここに来ているようだ。


周りに高い建物がないから夜空が天の川一色だ。


学校の理科の教科書で見たような星の地図が目の前に広がる。


彼女はコンクリの踊り場で黙って踊りだした。星がお客に思えた。


「おねーちゃん」


何も会話はなかったが、何も問題は起きなかった。


一時間ほど二人並んで天の川を眺めてから言う。


「綺麗だねタイゾウ」


「うん」



それから毎日の会話は無い。


でも知っているから。弟が人生を諦めてはいないことを。


朝が来るまでの瑠璃色の空、ベッドで天井を見つめる。


明日はあの娘にどんな顔で会えば良いんだろう。


ごめんと一言が言えない。


たった一言が言えないだけでこんなに困るのに。


あれからいつも天の川銀河を思い出す。


夜はいつも静かだ、ここらへんはへき地だから。


誰かといっしょがいいな。ひとりぼっちはさみしいから。



弟はいつも一人で泣いているのに、親に何も文句を言わない。


「星に話しかけるのかな」


ほかの同級生の娘と話したこと。


遠足でフェリーに乗ったとき。


「ねえみっちょん」「あの水しぶきは生きてるのよね」


「ええ?」「確かに生きてるように見えるよねえ」「あははは」


なんで記憶はあるのかな。


なんで都合よく消えたり覚えたり出来ないんだろ。


「・・・・」


がば


またあの展望台へ行きたくなった。


今度はコケずに来られたが、タイゾウは居なかった。


時間が違うのだろう。


「うわあ」


今日も快晴の満天夜空だ。


天の川銀河が鮮やかに広がっている。


「ふんふんふん♪」


誰かに見られてたらなんて踊る理由には成らないよ。


今夜は私も寝巻きだ。ひきこもりってイカス・・・


朝までこうしていたいな。何も考えずに。



「星のお客さんは何億人?」


軽やかなステップは、満天の星のお客さんに魅了されている。


明日の朝が来たら、また学校であの娘に「おはよう!」て言おう。


いつもの笑顔で。




挿絵(By みてみん)

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