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C 地を固めよう

 箱に入っていた物は、拳銃と幾つかの弾倉(マガジン)。見てみると、まだ弾は入っていた。

 しかし、使えない。リスクが高過ぎる。

 そもそも銃とは、何の訓練も無しに扱えるような物では無い。狙いのつけ方も安全装置の外し方も分からない素人が使えば、唯の動かない的に成り果てるだろう。

 反動に耐える筋力と、流す技術も必要だ。それが備わっていなければ、撃った瞬間に関節を外してしまう。

 避難民の中に、銃の扱いに長けた者がいる筈が無い。仮に老人の中に居たとしても、技術も筋力も衰えてしまっている。


これは、持っていけないな。危ないし。

ナイフの方が、よっぽど使える。


 イスカは銃を箱に仕舞う。懐中電灯はまだ保つだろう、資材回収を再開する。

 崩壊の危険のある場所を避け、隙間に体を滑り込ませて進む。

 機械部品なども見つけられたが、今は使わないので回収は後回しにする。現在は食料と、何よりも水が必要だ。非常食、非常用飲料水の管理は何かと疎かになりがちで、更には記憶していない場合もある。その上で、シェルターに常備されている事も多いため、少なくてもある可能性はあった。

 なるべく調べ残しの無いように、片っ端から探していく。何十分か、あるいはもっと長くか、探索を続けていると、棚が倒れているのが見えた。

 近くに寄って見てみると、幾つかの紙製の箱が入っているのが見えた。その中の一つから、水が流れ出てくるのも。


これは、アタリかな?


 多少凹んではいるが、気にする程のものでもない。破れていた箱を覗いてみると、カンパンなどの非常食が入っている事が見て取れた。

 言うまでもなく、アタリだ。

 しかし、当然ながら持って行ける量には限りがある。絶対量も決して多くある訳では無い。


 結局は安全策をとる。片腕に持てる一箱だけを取って、今日のところは帰る事にした。




「……なるほどね、このシェルターにはそんな量の食料があるんだ」


「たぶん。でも、やっぱり少ない」


「なあに、ここ数日は手で掴める程度の食料も得られなかったんじゃ。充分なモチベーションにはなり得るじゃろうて」


 イスカが少量の食料と水を持って来た翌日、リカルドとミゲル、そしてイスカは、今後について話し合っていた。

 漸く腰を落ち着けられるかも知れなくなったのだ。なんとかしてこのシェルターは確保したいと言うのは、避難民たちの偽らざる本心だった。


「それで、結果を焦ったりして、死んじゃったら意味がない」


 しかしそれも真理。生き残ると言う目的の為に死んでいては、目も当てられない。

 イスカは、リカルドを向く。


「無理はしないで」


 まるで見透かされたような言葉に呆気にとられるリカルド。

 前にも言っただろうが、リカルドは決して力の強い方では無い。机に向かっている方が好きな彼は、自身を労働力として不十分だと思っていた。

 その分、働き通すつもりだった。作業を三交代制にすると言ったリカルド自身は、常に働き続けるつもりだったのだ。


 一方ミゲルは、リカルドの心中を悟っていた。疲れた様子と手にできた肉刺(マメ)、目の下の隈。必要以上に体を酷使している事は明白だった。

 ミゲルも当然、何なら直ぐにでも言ってやるつもりだったが、イスカにタイミングを奪われた形になる。


「……でも、無理でもしなきゃ、僕は役に立てないから」


「ん、」


 弱音を吐こうとしたリカルドに、イスカはずいっとある物を突き出す。壊れたラジオと、その部品。


「おじさんは、これ、直してて」


「え、でも、これは今必要な物じゃあ……」


「いや、儂はイスカに賛成するぞ?」


 ミゲルがリカルドの言葉を遮った。


「人手と住居もそうじゃが、儂らには情報が足りておらん。が、それが直れば、少しは改善するじゃろうて。

 それに、放送局が生きておれば、戦争の状況もある程度は把握できるようになる。悪い事は無いじゃろ?」


 リカルドは少々、考える動作をする。そして数秒後に顔を上げると、二人に向かって首肯した。


「分かったよ。考えれば、ラジオ以上の情報源も無いしね」


 それから三人は、これからの方針を話し合った。

 取り敢えず、シェルター内での作業は変わらず三交代制で。老人たちも、手伝える部分は手伝ってもらう事になった。

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