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2回目の訪問

闇が落ち始めた頃を一人歩いて家に帰る。

明かりはついていない。ホッとしたような寂しいような気持ちを抱えながら鍵をあげ、暗い廊下に「ただいま」と言葉を放る。


「おかえり」と言う言葉が聞こえなくなってから長い時が去り、もう慣れた。


「お腹は……空いてないな」と一人呟き、自分の部屋に向かいそのままベッドへダイブした。




いつのまにか眠っていたようだ。朝日がカーテンの隙間から照りいり、私を起こしにかかっている。昨日の夜にお風呂に入っていないのを思いだし仕方なくシャワーを浴びに起き上がった。


シャワーを浴びながら昨日のことを思いだし、自然と笑みがこぼれた。そういえば、また明日ねとか言ったんだよなぁと、ふと思いだし、お土産に油揚げでも持っていこうかと考えた。だが、行くのは学校帰りになるだろうからやめておこう。


いつのまにか帰ってきていた母の用意した朝ごはんを一人で噛みしめ、母に軽めに「行ってくるね」と声をかけ学校に向かう。良い天気なのが少し恨めしい。今日はきっと暑くなるだろう。





学校に着くと、まだあまり人はいない。通学ラッシュに巻き込まれたくないために少し早く学校に来ているのだ。日課の花の水やりをしていると


「美景、おはよう」と落ち着いた声で挨拶された。声でわかる。この声は隼人だ。隼人とは小学生からぬの腐れ縁で、所謂幼馴染みというやつだ。「おはよう、隼人」と返すと何故か軽く頭をはたかれた。


「いった~!痛いよ、隼人」なんで叩くのよとぶうたれると


「お前なぁ…、昨日帰るの遅かっただろ。あんまり遅く帰るなよ、危ないだろ。」と父親かよっとツッコミをいれたくなるような言葉が返ってきた。


「き、昨日はたまたまだもん。今日は早く帰る!」と言い訳をぼそぼそと並べ、そそくさの自分の席へと逃げた。隼人は少し疑っているようだったが無駄だと思ったのか


「早く帰れよ?」ともう一度念押ししてから、机にうつ伏せた。


早く帰れと注意をもらっているが、今日は伊豆のところへ行くのだ。可愛い柚子も待っている。学校が早く終わってほしかった。


いつも通りに友達と談笑を交わし、授業をこなし、終令が終わるとすぐに友達に挨拶をし、小走りに教室を出て学校を去った。そのまま伊豆のところへ行くのだ。だが、廊下を出て、もう少しで行けるというところへ声をかけられた。


「秋山ぁー。ちょっと販売の手伝いしてくれんか?」見ると、実習担当の波野先生だ。あーあ、面倒くさいのに捕まったと思いながらも、


「はぁーい」と返事をして、すぐさま売り払った。終わると先生が報酬に売っていたミニトマトをくれた。


「ほら、おやつにでもしろ」お礼もほどほどにミニトマトを片手に伊豆のいる神社へ走っていった。





「伊豆……?来たよ?」と恐る恐る社の前で声をかける。


「もう少し大きい声をだしてくれんと、こんな老いぼれじじいの耳には届かんぞ?」と少し笑いながら伊豆の声がした。



声のした方を見るとまた屋根に上っているではないか。

「柚子は?」と聞くと中におるぞと返事があった。

下りてきた伊豆と一緒に社の中へと入り、今日も豪華な伊豆の部屋へと入った。


「今日はお土産があるんだ」と言いミニトマトを差し出す。「ミニトマトではないか。柚子!柚子!美景が来ておるぞ」と呼ぶと、襖が控えめにすっと開かれ柚子が立っていた。


「柚子!」そう呼び掛けると「美景様、こんにちは。そして、伊豆様。出雲様が怒ってらっしゃいます。なんとかしてください。」と言い、伊豆を引っ張り出した。


「美景様はこの柚子がご相手をさせていただくので、伊豆様は出雲様のご相手を。」と言い、襖をピシャッと閉めた。


「慌ただしくて申し訳ありません、美景様。ですが、伊豆様はこうしないと動かないのです。」


「いいよ、いいよ。お邪魔してるのは私だし。昨日来たばかりなのに居心地いいし柚子も可愛いしで来てしまったの。だから、一緒にミニトマト食べない?」と言うと大人っぽく対処していた柚子が少し照れたように頷き、私の隣に座り一緒にミニトマトを食べた。


二人でミニトマトをむさぼっていると、スパーんっという音と共に襖が開いた。見ると伊豆がはぁはぁと息を切らし少し苦しそうに立っている。


「はぁ、はぁ……。ミニトマト……。わしの分……。」

大丈夫?と声をかけようとしたところへ


「伊豆様っ!!!なにをしてらっしゃるのですか!まだ出雲のお話は終わっておりません!!!伊豆様っ」という高い声が聞こえてきた。


柚子は呆れたような目で伊豆を見ている。伊豆の方が偉いはずなのにこの対応はなんなんだろうと少し笑ってしまった。


笑っているときに「あらあらまぁまぁ。花嫁様っ!いらっしゃってたのですね。お見苦しいとこを見させてしまって申し訳ありません。もう少しだけ伊豆様をお借りしますね。花嫁様のご相手は柚子がしますので。」と言われ慌てて挨拶をした。


「あ、はい。はじめまして、美景と言います。花嫁ではありません。」と一応主張もしておいたのだが、


「申し遅れました、手伝い長の出雲と申します。よろしくお願いしますね、花嫁様。」と返された。話を聞いてないよ、この人……と思っていたら柚子が眉を八の字にしていた。

「どうしたの、柚子?」



「美景様は花嫁様ではないのですか?」いつもはクールな柚子が声を落としながら聞いてきた。


「伊豆様の花嫁様になってくれませんか……?」きゅるるんという効果音が似合いそうな目で柚子が見つめてきてぐっと詰まり思わず頷いてしまいそうになったが「ごめんね、花嫁とかまだ考えられないの」と答えた。


「そうですか……」と返事があり、シュンとしている柚子の向こうで伊豆が出雲さんに引っ張られていった。






ボーンボーン。どこからともなく時計の音が聞こえてきて驚き携帯を確認するともう7時を過ぎている。これはいけない。また隼人に怒られる。家が目の前だからばれてしまうのだ。慌てている私を見かねたように柚子「どうしました?」と声をかけてくる。


「今日は早く帰るように言われてたのにもう7時だから、今日は帰るね!」と言い思い出したようにまだ戻ってない伊豆に「また今度来るって伊豆に言ってて」と伝言を残し、神社を去った。




いけないいけないと走って帰っていると、ちょうど部活仲間と一緒に帰っていた隼人がいて、足音で気づいたのか振り向いた。驚いたような顔をしてから


「美景!!!!早く帰るようにって朝言っただろ!」と説教が始まってしまった。こうなれば隼人は長い。止まらない。それを察した部員たちは美景にご愁傷さまと言うような目線をくれ、こそこそと去っていった。私はというとこれは耐えるしかないので大人しく黙っていた。


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