霧の街・ティーク
夕刻の朱に染まったアレンキア平原。
少しずつ濃くなる霧を確認し
マインは 目的地が間近に迫ることを感じ取っていた。
霧の街・ティーク。
アレンキア平原の東側、エルフの住む森の近くにある街で
アレンキア大陸の観光スポットのひとつ。
街に足を踏み入れるマイン。
そこにはレンガ作りや石造りの建築物が立ち並び
霧深く視界は決して開かれてはいないものの 活気に満ち
そして、エルフの魔力帯という特性からか
そこはかとなく五感を刺激する不思議な感覚
アレンキアやライネイルとは違う、独特の雰囲気の街
そんな印象を受けるのだった。
『さて、聞き込み開始といくか・・・・』
立ち並ぶ露店には 夕食用の様々な食材が並び
見えにくいながらも、辺りには 良い香りが漂っている。
さすがアレンキア平原が近いというだけあり
鳥肉とヘビ肉が同時に楽しめる高級珍味「コカトリスナーガ」の丸焼きや
翼竜として知られる「ワイバーン」の手羽先
牛の祖先とも言われている希少種「アウズンブラ」のステーキなど
とにかく肉料理の種類が豊富で
おまけに希少価値の高い肉も、他の土地で買うより段違いに安い。
マインは そんな露店を散策しつつ
店主や道行く人から「フィルビス」と「ルーメル」の情報を聞いて回った。
「フィルビス フレアジーナ」と「ルーメル バロン」と言えば
世界最強の武力を誇るとさえ言われる自警団「ゲオルガード」に属する
「ガース ブラウン」や「モール グラント」と並び称される大物だ
この二人が何か行動を起こせば それだけで噂が生まれ
そして、人づてに流布されていくのは
容易に想像できることだったし
案の定「噂」ではあったが、両者の情報を得る事もできた。
「フィルビス」は 神封じの決戦の後 世界を巡る旅を始めたとの事で
すでに、ここ「ティーク」にも立ち寄っている事
そして、ここから北側へと旅立って行った、というところまでは
情報を掴む事ができた。
もう一人「ルーメル」はというと
どうやら今まさに、ここティークにいるらしいのだが
その居場所というのが
街の人間も立ち寄らない、いわくつきな場所「シュランリベール邸」
なぜ「ルーメル」がそんな場所に行く必要があるのか?
そこまでの情報は さすがに得られなかったが
確かなことがひとつだけある。
それは
マインは その性格上 強がってみせるだろうが
本質的に「幽霊は苦手」という事、それだけは間違いないということである。